老後資金をどう準備するのが正解なのか。重要なことは想定外のリスクに備えておくことだ。シニアの読者4人の「お金に関する想定外」を紹介しよう。第1回は「生涯賃貸のつもりが親の介護で住宅ローン」――。(全4回)
生涯賃貸のつもりが親の介護で住宅ローン
【定年時の貯金額】マイナス1000万円以下
あんな豪邸に暮らす人は、さぞやお金の余裕もあることだろう――。松井さんの自宅は、誰もがうらやむ横浜市内の高級住宅街にある。間取りは6LDK。父親が所有する一戸建てを2000年頃に松井さんが建て替えたものだが、この家こそが人生最大の誤算。老後を脅かす元凶となっている。松井さんは当時をこう振り返る。
「私も妻も家にこだわりがなく、ずっと公団で暮らしていたのですが、父が倒れ、看病に疲れ果てた母から“同居してほしい”と頼まれたのです」
生涯賃貸暮らしのつもりだった松井さんには頭金の蓄えもなく、ほぼ全額を住宅ローンで賄った。豪邸にするつもりはなかったが、当時は2人の子どもが独立前で、それなりの部屋数が必要だった。定年退職時点のローン残高は1600万円。返済は75歳まで続く。固定資産税の負担も重い。
松井さんは、化学系の専門商社を60歳で定年退職し、継続雇用で現在も同じ会社に勤務している。30代で現在の会社に転職し、その後は総務の屋台骨として会社を支えてきた。しかし、55歳を超えると昇給停止。60歳で定年を迎え再雇用されてからは給料が大幅ダウンし、賞与もなくなった。