大谷翔平に球拾いをさせるような仕組み

日本の大企業に就職したら悲惨なことになる、と先輩たちから聞いている学生もいます。大学院で人工知能のものすごい論文を書いた新入社員でも、「まずは現場を知ることが大切だから」と、地方の工場に配属される。朝礼では社是や社歌を唱和し、上司に報連相をたたき込まれ、TQC(統合的品質管理)などの管理技術を学ぶわけです。

せっかく大谷翔平くんが入団してきたのに、「野球がうまいのはわかるけど、まずは球拾いとバット片づけからやって」と、いわゆる雑巾がけからスタートするようなもの。何の疑いもなくそう進む現実を知っています。

撮影=西田 香織

東大のトップクラスだけではありません。冒頭で紹介したように、外国のギフテッドな人材はもっともっと厳しく判断します。たとえば中国出身の女性がMITにいて、専門のガスタービンで最先端の研究論文を書いたとします。もちろん、中国語と英語はペラペラ。さて、自分の能力や研究成果を活かせる就職先はどこだろう、と考える。

アメリカのGEにしようか、ドイツのシーメンスにしようかと迷うなかで、日本の重電メーカーも頭に浮かんで調べてみる。すると、ホームページで、さっきの役員一覧を見てしまうわけです。

上から目線では、優秀な人材に見向きもされない

さらに、外国人の採用に「日本語が話せること」と条件がついたらナンセンスです。エンゼルスだって、大谷翔平に専属通訳をつけています。ガスタービンの事業で成功するためなら、最先端の研究者に通訳をつけるのは当然でしょう。

むしろ、日本語が堪能な人を選んで採用したら、研究者として世界トップクラスではない可能性のほうが高い。

経営者がいくら「企業は人なり」「人材でなく人財」といったところで、グローバルに戦える人材はちっとも採用できません。日本の大手企業には、いまだに「採用してやる」という上から目線のところがあります。

人気企業は、採用試験にエントリーしてくる学生の数だけはたしかに多い。だから、優秀な人材の採用で外国企業に負けている自覚はないのでしょう。

これは学卒一括採用、終身雇用、年功序列で維持してきた“連続性と同質性が高い組織”の体質でしかありません。「入社後に育てる」が通用しない時代は、はじめからギフテッドな若者を採用するほかないのです。