特に重要な経験は失敗から学ぶこと。私も何度も失敗しましたよ。6つの銘柄の株式に投資し、数カ月で2倍になったものの、最終的には6社すべてが倒産したこともあった。常に生き物のごとく変化するマーケットでは、こうしたクレイジーなことが起こるのです。

そのとき学んだ教訓は、投資には念入りなリサーチが必要だということ。自分では調べたつもりでしたが、十分ではなかった。当時の私は自信過剰で傲慢だったのです。また、自分の足で情報を集め、自分の頭で考えることも肝に銘じるべきでしょう。ブローカーの言葉、メディアを通じて得た情報だけに頼ってはいけません。

株と商品の時代は交互にやってくる
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株と商品の時代は交互にやってくる

株式投資をするなら、世界の大きな流れを把握することに加え、会計学の知識も必要不可欠です。企業のバランスシートを読み解き、そこに不正がないかどうかを見極める――努力は必要ですが、それほど難しいことではありません。私は独学で会計学を学びましたからね。

商品(コモディティ)の場合は、株よりもシンプルです。たとえば天然ガス会社の株を買う場合、財務状況はどうか、経営はどうか、その国の政治的、経済的な状況はどうかなど、考慮すべき点がたくさんある。でも、商品なら、たとえば天然ガスの供給は需要に対して多いか少ないか、それがわかれば儲けることができるのです。私なら、天然ガス会社500社を比較検討するより、天然ガスそのものを買いますね。エンロン事件を思い出してください。同社の株を買った人は大損しましたが、天然ガスの価格そのものは、あれから約3倍になっているのです。

今後10年は商品の時代が続くでしょう。もちろんアジアの株式も有望だと思います。日本、中国、韓国、台湾、シンガポールと主な債権国がアジアに集まる一方、債務国は欧米に偏っている。ここ数年、私は手持ちの米ドルをどんどん売っていますよ。

(構成=梶山寿子 撮影=澁谷高晴 図版作成=ライヴ・アート)