『こち亀』40年間で変わったこと、変わらなかったこと
『こち亀』を永く連載する中で、変わったところもあれば、変わらなかったところもあります。変わったのは、なんといっても自分の年齢です。両さんは30代半ばの設定です。最初は僕にとって“年上のおじさん”だったのに、やがて同年代に。僕はプラモデルが好きなので、漫画の中でも両さんにプラモをつくらせて、「この年齢になってプラモをつくったっていいよね」と代弁させたりしていました。
そのうちにこんどは僕のほうが年上になり、部長に年齢が近くなりました。そうなると部長の気持ちが痛いほどわかって、両さんに仕事を真面目にさせるようになりました。このころは部長がメインの話も増えましたよ。部長が浮気まがいのことをしてしまったりとか、部長がポケモンをやりだしたりとか。むしろ部長が暴走して、両さんが止める展開が多かった(笑)。
僕自身が年齢を重ねてきたこともあって、じつは両さんのキャラは二転三転しています。初期のころは子供を平気でブン殴っていたし、タバコも吸っていました。でも後半は警察官をやりながら寿司屋に住み込みで働かせて、疑似的に家族を持った設定にしたので、だんだんお父さんぽくなってきた。主な読者が子供ですから、放っておくとどんどん優しい人になっちゃうんです。
でも、いい人すぎるのは、やっぱり両さんではありません。
息苦しい世の中こそ、両さんに居てほしい
優しくなりすぎたと感じたら、派出所に戻して部長に怒られたり、宝くじでインチキをして一攫千金しようとしたりと、引っ張り下ろす回をつくりました。そうやって時々戻していたので、二転三転しつつも、結果的にキャラはブレなかったんじゃないでしょうか。
『こち亀』がみなさんに永く愛されたのも、両さんの魅力が変わらなかったからでしょう。両さんは警察官。本来ならもっともおカタい職業です。それでもハチャメチャなことばかりやって、たくましく生きてきました。
会社勤めで大変な思いをしている人も、両さんのそういう姿を見れば、「あんな生き方でもいいのか」と勇気をもらえたはずです。本当は世の中が息苦しくなるほど、両さんのようなキャラクターが必要なのかもしれせんね。