香典「一律3000円」は妥当な金額なのか

野暮やぼではあるが、葬式の香典が一律3000円というのは妥当な金額と言えるかどうかを見ていきたい。結論からいえば葬式の香典の金額として3000円は常識の範囲内と言えるだろう。

「香典(奠)」という言葉は、本来は霊前にお香を手向ける代わりとして、金銭をお供えすることに由来する。したがって、お香の代金を基準にするならば、香典の金額はたかが知れているのだ。

そもそも香典の金額は地域性でほぼ決まる。地縁が残っている地方都市では「3000円」か「5000円」がおおかたではないだろうか。

いっぽうで首都圏の場合は「1万円」がスタンダードな金額のようだ。これは都市部では地縁の結束がもろく、個人単位で葬式に参列するケースが多いからである。

ムラ社会では江戸時代からの檀家制度や、慣習に基づく暗黙知によって香典の額がそれとなく決まっている。

しかし、「個の社会」になっている都市部では、金額を決めるよりどころがない。そのため、世間体を気にした「心理的な上乗せ」が生じるのである。

撮影=鵜飼 秀徳
お彼岸の季節に合わせて咲くヒガンバナ

東京は「1万円が相場」だが3000円でも差し障りない

これは、前回のコラムで触れた通り、葬式の布施相場と同じ構造である。だから、樹木さんのように世間体さえ気にしなければ、東京でも3000円でも差し障りない。とはいえ、喪家から頂く香典返し以上の金額は包んでおくのが好ましいと、私個人的には思う。

香典は数千円で済むが、葬式の布施は万単位になる。このところ、葬式の布施の金額を巡って住職とトラブルになるケースをしばしば耳にする。

「あなたの家は前回のお葬式で500万円のお布施だった。今回も同様の金額で」

とか、

「院号居士が欲しければ100万円以上」

などと、法外な金額を提示する寺もあるそうだが、とんでもないことである。布施は喜捨(払う側が布施することに喜びを感じて金額を決め、差し出すもの)であり、僧侶側が金額を決めることではない。だから、布施は非課税とされているのである。