見え隠れする米情報機関の影

例えば、黎智英氏の経営する系列企業の経営幹部で、氏の右腕ともされる米国人のマーク・サイモン氏という人物については、以前からさまざまな噂があった。2014年8月11日の「サウス・チャイナ・モーニングポスト」紙("'I'm not a spy', says Jimmy Lai's right-hand man Mark Simon")によると、米海軍情報部出身のサイモン氏は、過去に「私の父は35年間、CIAに勤務していた」「自分はCIAでのインターン生であった」などという発言をしていた。

このサイモン氏は当然ながら中国当局に狙われているらしく、2014年の雨傘運動の最中には、氏のメールが何者かによってハッキングされ、しかも何度パスワードを変えてもハッキングされ続けるという高度な手法による攻撃を受けたという。(サウス・チャイナ・モーニングポスト紙、2014年8月6日"Jimmy Lai's top aide reveals his email accounts were hacked")。

ちなみに黎智英氏とサイモン氏は、2019年8月3日に香港セントラル地区のイタリア料理店で、ホワイトハウスでも東アジアの安全保障政策に関する助言を行っていた米国務省元顧問のクリスチャン・ウィトン氏と食事をしていたことが地元メディアによって確認されている(Dimsumdaily Hong Kong、 2019年8月17日 "EXCLUSIVE! The mysterious man that met up with Jimmy Lai and his entourage in Central HK is Christian Whiton, a national security expert who has served in multiple White House administrations")。

2013年に『スマート・パワー』という本を出版したウィトン氏は、より洗練され(スマートな)、かつ情報機関的な秘密活動を伴う高度な政治戦によって米国の国益を利する活動をすべき、という考えを持っている。

今回のデモの背後にCIAがいると信じて疑わない中国情報機関が今でも、こういった人々の監視を強めているであろうことは想像に難くない。そもそも、このような情報が地元メディアに流されること自体、すでに激しい情報戦が繰り広げられている証拠だ。その香港では、すでに米国と通じていたり、反体制思想を持つとされる人々の失踪事件も相次いでいるが、これらは報道さえされないという。

これからも習政権は、あらゆる手段を使って中国版「カラー革命」を防止しようとするに違いないが、そんな彼らの暗闘の多くは決して表に出てくることはないであろう。(続く)

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