一方、香港では中国の情報機関も秘密活動を行っている。例えば、中国政府が敵視する「法輪功」の活動を妨害するための工作活動は依然として活発であるし、地元では今回の抗議運動を鎮圧した治安部隊の中にも少なくない中国の公安関係者が紛れ込んでいたとするうわさもある。

米ネオコン人脈とつながる実業家

香港の抗議運動に参加しているグループには、全米民主主義基金(NED)から資金援助を受けているものがあるということも度々報じられてきた。このNEDとは、1983年のレーガン政権時代に「他国の政府を民主化する」という目的で設立された組織である。

しかし実際のNEDは、反米的な国の政権交代(あるいは体制転覆)を支援するために、その国の反対派に資金援助などを行ってきたのであり、CIAのフロント機関とも呼ばれている。

NEDは、2014年の雨傘運動の頃から香港のデモ支援を行っていたようだが、そのNEDと並んで香港の民主化運動を支持している地元の富豪もいる。その1人が、地元香港メディア界の大物で、蘋果日報(アップル・デイリー)を創業した黎智英(ジミー・ライ)氏だ。

貧しい家から一代で巨額の富を築いた立志伝中の人である黎氏は、2014年の雨傘運動には億単位の資金を提供し、実際に自分でもデモ隊に参加した行動の人で、もちろん今回の抗議運動をも強く支持している。

そのせいで、黎氏は中国メディアから「漢奸(売国奴)」と罵倒され、その自宅は過去に車で突っ込まれたり、火炎瓶を投げ込まれたりしている。2019年9月5日にもやはり自宅が火炎瓶攻撃を受けている。

2019年7月10日付の「ブルームバーグ」("Trump Team Sends Defiant Signal to Beijing by Meeting Hong Kong Activist")によると、その黎氏が同月にワシントンを訪問し、ベネズエラやイランに対する軍事力行使を願うマイク・ペンス副大統領やポンペオ国務長官、さらにはジョン・ボルトン元安全保障担当といった「ネオコン(新保守主義者:リベラルから転向、米国の国益のためには武力行使も辞さぬ保守主義者)系高官」と会談、そこで「香港は自由と民主の危機にある」として米国の支援を求めたという。

そんな人脈と関係を持つ黎智英氏を、習近平政権が「CIA工作員」と呼んで非難するのは驚くに当たらない。