立て替え経費がかさみ、モヤモヤが募る

もっとも義父母も、“出してもらって当然”という態度だったわけではない。夫が財布を取り出すと、たいてい義父母も財布をゴソゴソと捜しはじめ、親子で押し問答をしていた。

「ここは俺が払っておくから」
「そんなのダメよ。申し訳ないわ」
「これぐらい、いいよ」

そんな親子のやりとりを目にするたび、モヤモヤした。私としては、もっとハッキリ「立て替えておく」と伝えてほしかった。「これぐらい、いいよ」という言い方では相手も誤解するでしょう、とも思っていた。でも、ヘンに口出しをしてもめるのも面倒。「親の面倒なんて見ない」と言っていた夫が、前向きに介護にかかわるようになっているのに、水を差したくないという気持ちも働き、ますます何も言えなくなっていた。

「印鑑相違」がもたらした、話し合いのチャンス

親と介護費用の相談をするチャンスは思いがけないところからやってきた。訪問介護(ホームヘルプ)や訪問介護の事業所、宅配弁当業者に提出した「口座振替依頼書」がことごとく、「印鑑相違」で差し戻されてきたのである。

現場で対応してくれた方々の話によると、義父は「ほかにも印鑑があります」と、いくつか探し出したらしいが、それらの印鑑が本当に銀行印なのかどうかわからない。銀行印の確認については別途手を打つとして、まずは、目の前の引き落とし問題を解決する必要がある。

手っ取り早いのは、長男である夫が介護用の専用口座を開設するという方法だ。親から介護資金を預かって入金し、そこから引き落としてもらえば、解決する。介護費用について相談するきっかけにもなるし、そもそも介護費用に回せる預貯金額がいくらあるのか、予算も把握しやすくなる。こちらとしては願ったりかなったりである。

家計の権限を握っているのは誰なのか

「親と介護費用について相談する」といっても、誰が、誰に相談するのがスムーズなのか。そこは、もともとの親子関係や、家計の権限を誰が握っているかによっても変わってくるだろう。

夫の実家では、義父が預貯金などを管理し、毎月の生活費を義母に渡し、義母が日々のやりくりをするという役割分担になっていた。介護費用について話をするなら義父、それも息子(私の夫)から切り出すのがスムーズだろうと、予想を立てた。