「主任」になっても、給料は以前とほぼ同じ

主任資格を取得済みのケアマネジャー・Tさんは言います。

「取得にかかる時間の長さ以外にも大変な面があります。主任になるための研修の受講料が高額なのです。都道府県によって異なりますが、安くても3万円、高いところは6万円もします。主任になるかどうかは任意なので、この費用は基本的に自己負担。しかも、忙しいケアマネ業務の合間に時間をつくって受講しなければならない。周囲に気を遣いながら取得する資格なのです」

これほどの苦労をしてなる主任ケアマネ。当然、メリットはあると思われますが、「ケアマネの名称の頭に“主任”がついたところで、大した違いはありません」とTさんは語ります。

「報酬に関しては私の場合、主任になった後も以前とほぼ同じです。業界でいわれるメリットとしては『指導的立場になれる』『他のケアマネやサービス事業者から頼られる』『転職に有利』といったことが挙げられますが、指導的立場になれば、その分、責任も増します。頼られるかどうかは、その人の人間性にもよるでしょうし、転職についても主任だからといって特別好待遇になったという話は聞いたことがありません。私は若い頃から、この分野のエキスパートになろうと思っていましたから主任を取得しましたし、立場に対する自負もあります。でも、残念ながらメリットは感じたことは一度もありません」

こうした事情から主任ケアマネになる人が少ないというわけです。

ケアマネも「働き方」によっては廃業が決定的な人もいる

とはいえ、今回の法改定によって風向きが変わりました。主任ケアマネがいなければ事業所として認められなくなるわけですから、主任不在の事業所では大慌てで経験が5年以上のケアマネに研修を受けさせているといいます。

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「ところが、ここでも問題が生じています。主任研修に人が殺到するようになったため受講倍率が2倍、3倍になっている。主任になろうと研修に申し込んでも、受けられない人が大量発生しているんです。特に気の毒なのは“一人ケアマネ”です」(Tさん)

介護保険法では「居宅介護支援事業所」とひとくくりにされていますが、ケアマネが働く環境はさまざまです。「事業所」はもとより「地域包括支援センター」や「老人ホーム」に所属する人もいる。また、単独で仕事をしている「一人ケアマネ」も少なくないそうです。

「一人ケアマネは2021年の3月までに主任にならなければ、仕事は続けられなくなります。そのなかには経験が1~2年という人もいる。3年の経過期間では資格を満たすことができず、ケアマネ廃業が決定するわけです。ひどい話でしょ?」(Tさん)

主任ケアマネがいる事業所に雇ってもらえばいいのでは? とも思いますが、事業所を経営するIさんは「ケアマネの事業所はどこも採算ギリギリで経営しています。新規で人を増やすメリットはほとんどありませんから雇用は望み薄。ケアマネとして残れる人は少ないと思います」といいます。