日本の高血圧患者数4000万人。放置すると「動脈硬化」を進行させ、「心筋梗塞」「脳卒中」に結びつくので、症状がないから大丈夫、と放っておくのは禁物。早くから対応するのが大事である。

2009年、日本の高血圧治療を定めた日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインが改訂された。新しい「高血圧治療ガイドライン2009」が発表され、すでに実施されている。大きな変更点としては以下のようである。

(1)正常高値血圧でも条件によっては治療が必要になった。
 (2)降圧目標に「心筋梗塞後患者」「脳血管障害患者」が加わり、診察室血圧のみならず家庭血圧の目標値も示された。
 (3)高血圧の軽症、中等症、重症の表記がI度、II度、III度に変更された。
 (4)初診時の高血圧管理計画では、中等リスク群での降圧薬治療は「1カ月後に」から「1カ月以内の指導に」となった。
 (5)第一選択の降圧薬から「α遮断薬」が消えた。

このほかにもいくつかあるが、大きなものは以上の5点である。

その中で注目は、メタボリックシンドロームも治療の条件となった(1)のケース。糖尿病などの病気があると正常高値でも「高リスク」になり、直ちに降圧薬治療となるが、辛いのは「中等リスク」のケースである。

正常高値とは正常血圧の範囲内で130~139/85~89mmHg。それでも「糖尿病以外の高齢、喫煙、脂質異常症、腹部肥満などの危険因子が1~2あり、またメタボリックシンドロームがある」と、生活習慣の改善や危険因子を減らすための対応を余儀なくされる。

この場合のメタボは、「正常高値」と「腹部肥満(男性85センチ以上、女性90センチ以上)」が基本としてあり、これに「血糖値異常(糖尿病予備軍)」か「脂質代謝異常」のどちらかがある場合だ。正常高値で“指導”という治療が必要な中等リスク者を含めると、高血圧患者は5500万人というから大変である。

その改善ポイントは、まさに生活習慣の見直しで、より複合的に修正していくのが効果的であるのは当然である。

【生活習慣のワンポイント】

ポイントは7点。ただし、これは高血圧患者への修正項目だが、正常高値の中等リスク者も同じように修正することで、高血圧患者にならずにすむ可能性が高くなる。

(1)減塩――1日の塩分摂取量は6グラム未満を目標にする。目安として、即席ラーメン1袋約7グラム、アジ干物1枚約1グラム、ちくわ1本約3グラム、カレーライス1皿約2.5グラム、ソース焼きそば1皿約3グラムなど。理想的な塩分摂取量は1日3.8グラム以下である。塩味ではなく、酢、ごまだれ、ニンニクの香りなどを活かす。

(2)食事――野菜・果物を摂取し、コレステロールなどの多い食品は控える。つまり、魚中心の食事になるので、味つけは塩分を抑える。

(3)減量――BMI(体重〈キログラム〉÷身長〈メートル〉の2乗)は25を目標にする。少し減量するだけでもかなり血圧は下げられる。

(4)運動――1日30分を目標にウオーキング。15分を2回に分けてもOK。少し汗ばむくらいのウオーキングが最適である。

(5)節酒――多量の飲酒は血圧を上げるので、酒量を抑える。男性ならばビール中ビン1本、女性はその半分である。

(6)禁煙――喫煙は動脈硬化を促進させることがわかっている。肺ガンを代表とするガンばかりではないので、この際、スパッと禁煙!

(7)その他――ストレスも血圧上昇に大きく関係するので、ストレス解消のために十分睡眠をとり、趣味を楽しもう。また、温度の差が大きいと血圧に関係するので、寒いところに出るときは、出る前に防寒。家の中は温度のバリアフリー化を!