開成、麻布と並ぶ「進学校の御三家」として名高い武蔵(東京・練馬区)。ジャーナリストの永井隆氏は「OBたちの進む道のバラエティの豊富さでは他に抜きんでている」という。卒業生への取材から、その秘密に迫る――。

※本稿は、永井隆著『名門高校はここが違う』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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宿題をやるかは生徒の自由

「重厚感ある大講堂や校舎と、全国トップクラスの広さを誇るグラウンド、制服も校則すらもなく、自由でのんびりしていた。とても青春を謳歌させてもらいましたね」

こう語るのは現在、早稲田大学総長を務める田中愛治氏だ。田中氏は中高一貫校の武蔵中学に1964年に入学し、武蔵高校を70年に卒業している。その後に早稲田大学に入学し、オハイオ州立大学で政治学の博士号を取得。その後、いくつかの大学で教鞭を執った。

「武蔵高校は生徒だけでなく教員も個性的で、倫理学者の和辻哲郎の息子さんが道徳を教えていたり、哲学者・西田幾多郎のお孫さんも教員としていらっしゃった。結構な量の宿題が出されるのですが、それをやるか否かは各自に委ねられ、しかし授業は淡々と進むので、ちゃんと予習していないと、数学などは置いてきぼりにされてしまうのです(笑)」

生徒の9割が何かしらのクラブに所属している

自由放任でハイレベルな授業が展開される様は、さながら大学のようである。そして武蔵の特徴として、部活が盛んであることを挙げる。「高校は1学年160人ですが、生徒の9割が何かしらのクラブに所属していて、私は陸上部でした。バスケットボール部は強豪で、インターハイで3連覇したこともあります」。

主に短距離走で活躍した田中氏は、高校2年時には主将も務めた。

「中高一貫なので、中1から高2までが一緒に練習します。先輩からのきつい練習を引き継ぎ、私も厳しいメニューを作成し、仲間たちとこなしました。200メートルのトラックを何周もダッシュしたり。苦しさのあまり吐くこともありました。練習後は、学校の前のパン屋でピーナッツバターを塗ったコッペパンを食べるのがならいで、コーラは高校生になれば飲めるけれど、中学生はダメという暗黙のルールがあった。なんとも牧歌的です(笑)」

毎年4月、名門私立の武蔵・麻布・開成高校の“御三家”で、各運動部の対抗戦が開催される。陸上部は麻布との2校対決だったが(その後、8校の対抗戦に拡大)、田中氏もこの対抗戦に向けて励んだそうだ。