「何もしていないとき」に働く脳部位がある

思い出す方法には、実は、二種類あります。無意識的にやる方法と、意識的にやる方法です。

前者は、デフォルト・モード・ネットワークの働き。後者は、脳の司令塔である前頭葉が命令を出して、意識的に記憶を引っ張り出すようにすることです。

デフォルト・モード・ネットワークは、何かに集中しているときよりも、何もしていないとき、リラックスしているときに、よく働く脳部位です(海馬もこのネットワークの一部と考えることができます)。

多くの人は、脳は集中しているときによく働いていると思っているようですが、それは、間違いです。何もやっていないときでないと、働かない脳部位があり、それがデフォルト・モード・ネットワークなのです。

ぼーっとすると「記憶の整理」が始まる

休んでいるときに、脳は勝手にさまざまなことを思い出して、体験と体験とを結びつけ、記憶の整理をします。日中集中して仕事をしたり、たくさんの人に会ったりしているからこそ、脳は体験の整理をする時間が必要になります。何かに集中してばかりいたら、情報が入ってくるばかりで、脳が整理の時間を取ることができません。

ぼーっとしているのは「無駄」な時間にみえますが、大事な整理をしている時間なのです。何もしないでいると、脳はようやく記憶を整理し始めます。

デフォルト・モード・ネットワークが一番働くのは、眠っているときやシャワーを浴びているとき、散歩をしているときなどです。そうしたリラックスをしているときにこのネットワークが働いて、記憶と記憶を結びつけたり整理したりすることで、いいアイデアが浮かぶとか、ずっと忘れていたことを不意に思い出すことがあります。1日の中で5分でも10分でもぼーっとする時間を持ちたいものです。