自分自身を「呪縛」から解き放った

百合は五十嵐の呪いの言葉に縛られない。逆に、百合を抑圧しようとする五十嵐に対し、それは「呪い」だと告げる。呪いの言葉で相手を支配しようとする、その構造を可視化させる。そのうえで、「あなたが価値がないと思っているのはこの先自分が向かっていく未来よ」と、問いを相手に返していくのだ。

そして、五十嵐にそう語ることによって、百合自身が呪縛から解き放たれていく。

彼女に偉そうに言いながら
一方で自分の言葉に驚いていた

だって

一番年齢や周りの目を気にしていたのは
他ならぬあたしじゃない

そう気づいたあとで百合は、風見のことをどう思っているのかと問う五十嵐に向かって、緊張の取れた笑顔でこう答えるのだ。

大好きよ
あなたもそうなんでしょ?

その下に、この言葉。

するりと言葉がこぼれて
心に気持ちの良い風が吹いた

切り返せれば「自由で柔軟」になれる

この百合のように、呪いの言葉を投げかけてくる相手に、切り返していくこと。それができるようになれば、私たちはより自由に、より柔軟に、状況を把握し、恐れや怯えや圧力から、心理的に距離を置いたうえで、状況への対処方法を考えられるようになるのではないか。

そう考えて、「呪いの言葉」への切り返しかたを文例として集め始めた(2018年6月18日)。どなたかまとめていただけないだろうかとツイッター上で呼びかけたら、面識のないフォロワーであった@tokitaroさんというかたが、その日のうちに手を挙げてくれて、翌日には「#呪いの言葉の解き方」という素敵なサイトを作ってくださった。

その後、さらに文例が増えて、「政治参加・市民運動」編、「労働法制」編、「野党は」編、「いろいろ」編と分けて、文例を収録いただいた。