切り返すことで本当のねらいを明るみに出せる

そう問い返すことによって、「野党は反対ばかり」と言いつのる相手がねらっていたのは、まともな審議を実現することではなく、野党の指摘を無効化することであると明るみに出すことができる。法案を通したい自分たちの意見を正当化できないからこそ、正当な指摘をおこなっている野党を、そのような呪いの言葉で抑え込みにかかっているのだ。呪いを呪いとして認識すること、呪いの言葉による抑圧の構造を可視化することこそ、必要なのだ。

そう思った私は、さまざまな「呪いの言葉」に対する切り返しかたをツイッター上で募集することにした。「#呪いの言葉の解き方」というハッシュタグを作って、自分でも文例を示して見せた。

「若さ」という呪い

参考にしたのは、ドラマ化されて話題となった海野つなみのコミック『逃げるは恥だが役に立つ』(『逃げ恥』)(講談社、2017年)の、土屋百合の言葉だ(第9巻)。

百合は、結婚も出産もせずにキャリアを手にしてきたが、親子ほども歳が離れた風見涼太から恋愛感情を告げられて心が動く。しかし、みずからの年齢を考えてその思いを受け入れないことを伝えていた。その事情を知らない五十嵐安奈が、風見の彼女のポジションをねらって百合に近づき、こう語る。

やっぱり若さというのは価値の一つだと思うんです

アラフィフの百合に圧力をかける言葉だ。

その言葉に百合は「呪いね」と応じ、こう続ける。

自分で自分に呪いをかけているようなものよ
あなたが価値がないと思っているのはこの先自分が向かっていく未来よ
それって絶望しかないんじゃない?

自分が馬鹿にしていたものに自分がなるのはつらいわよ
「かつての自分みたいに今周りは自分を馬鹿にしてる」と思いながら
生きていくわけでしょ

そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまうことね
あなたがこの先楽しく年を取っていきたいと思うなら
楽しく生きている年上の人と友達になるといいんじゃないかな

あなたにとっての未来は誰かの現在であったり過去だったりするんだから