2009年1月末から10年2月末まで、国内で設定・運用されている公募型投資信託のうち、純資産残高が最も増えたのが「通貨選択型」と称されるファンドである。なかでも毎月分配金が得られることを前提にした毎月決算型の商品は、純資産残高が2兆6186億円も増えている。

投資対象は海外債券が中心だ。債券の種類は、国債や地方債など政府関係機関が発行しているソブリン債を組み入れるタイプもあれば、信用リスクが高いハイ・イールド(高利回り)債を組み入れるタイプもある。いずれにしても、多くは短期金利が低い水準で推移している米ドル建て債券になる。

さらに、通貨別に複数のコースが設けられている。これを「基準通貨」という。一方、ファンドの投資先となる債券の通貨は「投資対象通貨」だ。そして通貨選択型ファンドは、基準通貨でもって、投資対象通貨のファンドを購入することで為替変動リスクをヘッジ(回避)する仕組みである。

為替ヘッジとは、もし米ドルが下落したとしても、ある程度、為替差損が生じるリスクを軽減できるよう、事前に米ドルを決まった為替レートで売ることができるという約束(先物予約)を取り付けておく取引のことだ。

さて、金利の高い基準通貨で、金利の低い投資対象通貨をヘッジすると、どういうことが起こるのか。この場合、「ヘッジプレミアム」といって、為替の差益とは別に、両通貨の金利差に相当する分を収益として得ることができる。

この「ヘッジプレミアム」が得られることが商品のセールスポイントになる。多くのファンドは、プレミアムが得られやすいように、投資対象通貨については短期金利の低い米ドル建てとし、基準通貨のほうはブラジルレアルや南アフリカランド、豪ドル、ニュージーランドドルなど、米ドルに比べて相対的に短期金利の水準が高い通貨を選択できるようにしている。