▼治療、休業、慰謝料……すべてにおいて大きな差が

交通事故

交通事故に遭った際に弁護士を呼ぶ人はわずか10%だといわれているが、弁護士をつけるかつけないかで損害賠償を受けられる金額が大幅に変わる。なぜなら、弁護士をつければ見落としがちな損害賠償金をくまなく申請できるうえ、保険会社との交渉もスムーズだからだ。

青木弁護士は、「分岐点は通院開始の時点で弁護士に依頼するかどうか」だと話す。後遺症認定のためには半年間通院することが目安となっており、早めに弁護士をつけてその事実を知っておかなければならない。

では、具体的にどれくらいの金額の差が生じるのか、図のようなシミュレーションを行った。

交通事故被害に遭った際の損害賠償金を、弁護士がいる場合といない場合とで1つずつ検証していこう。

弁護士なしでは治療が安くなる?

まずは「入通院慰謝料」。これは、その名の通り入通院の精神的苦痛に対する賠償金で、傷害の「程度」だけではなく通院の「長さと頻度」も加味して決まる。そのため、通院開始時から弁護士のアドバイスが必要になるので、この観点からも通院開始時から弁護士をつけるのが重要といえる。

入通院慰謝料の算定基準は3つあり、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の順に額は大きくなっていく。弁護士を通じて交渉を行うと、保険会社は裁判で多額の費用がかかるのを避けるため、多少高額になっても裁判基準を適用する傾向がある。この男性のケースでは、弁護士ありの場合、裁判基準で124万円前後の請求になるケースが多いが、弁護士なしの場合は任意保険基準が適用され、裁判基準の6~7割程度となりがちだ。

「治療費」は弁護士の有無で保険会社からの損害賠償金額が変わることはないが、弁護士なしの場合だと自由診療が敬遠されるため、十分な治療が受けづらくなる可能性がある。

対して、弁護士がいる場合、弁護士が保険会社に1本電話を入れるだけで「一括対応」をしてもらいやすくなる。加害者側の保険会社が医療機関に直接治療費を支払うので、被害者は病院の窓口でお金を払う必要がない。さらに、弁護士が交渉に入ることで、自由診療のもと、質の高い治療を受けやすくなるというメリットも。