「仕事復帰」を支援するサービスが足りない
――そばで支える家族が追い詰められないためにも、患者の“早期仕事復帰”が重要だというお話がありました。そのための支援制度などはあるのでしょうか。
病院や介護サービスと患者をつないでくれるのがソーシャルワーカーなんですが、それは“家庭復帰支援”であって、“仕事復帰支援”ではないんですよね。
働き盛りの50歳で発症した夫の例をはじめ、本に書いてあるとおり、病院には30~40代の患者さんもいました。現役世代向けの支援の必要性も高まっているのではないでしょうか。たとえば脳卒中で後遺症を抱えたサラリーマンが会社に復帰したいとなった場合、その人の上司は、部下の後遺症がどのようなものかわからないと思うんです。
さっきの話のように見た目にまったくわからない後遺症を持つ人もいるわけで、そういった患者の状況や、仕事として今できること、どのような配慮が必要かを客観的に説明してくれるような、職場と患者をスムーズにつないでくれるサービスがあったら……と思いました。
患者を受け入れる「社会」の恐怖心を減らしたい
「がん」だと社会復帰のことなどを相談できる専門家が各地にいるそうですね。脳卒中の場合、現状ではそれに一番近い存在が理学療法士さんとかになってしまうのかなと。
リハビリを組み立ててもらっているのでどんな作業がどれだけできるかを把握しているし、仕事に含まれていないとは思いますが、心のケア的なことも会話のなかでしてもらうこともあるので、患者の状態を誰よりわかってくれている存在なんです。
そう考えると理学療法士や作業療法士と会社、患者の間をつないでくれる存在が今、求められているのかもしれません。脳梗塞、くも膜下出血、脳出血……どれも「得体の知れないヤバい病気」という感じもあり、周りの人は腫れ物に触るような対応になりがちです。また「聞いちゃいけない」と遠慮する人もいるでしょう。
これは本を書いた動機のひとつでもあるんですが、「脳梗塞をやった夫の場合、右半身麻痺の後遺症があってもこれくらいのことができました」と提示することで、受け入れ側にある恐怖心を少しでも緩和できたら、という気持ちがあったんです。
周囲から病気や後遺症の理解が得られれば、発症前ほどガンガンはできなくても、その人がいなくなった分をバイトで補うよりかはよっぽど仕事はできるはずですから。