【3.トーク・スルー】「生煮えのアイデア」を話してみる
グーグルのCEO、エリック・シュミットは、新規のアイデアを募るために、まずは人の意見を徹底的に聞き取るそうです。「30人のアイデアを集めて、そこから取捨選択する」のが、彼流の仕事術。他者というフィルターを通過することで、隠されていた「創造性」の原石が発見されることは、よくあることです。
その代表的なものが「トーク・スルー」(talk through)のテクニック。アイデアを創出する際、自分の中で熟成する前に、他人に話してみるというもの。
会社のプレゼンなどで事前に綿密な資料を作成し、話す順番も決めておくという人は多いでしょう。バラク・オバマはそのタイプです。彼はスピーチの内容を事前に入念に準備しています。しかし、新たなアイデアを創出したいときは「トーク・スルー」のアプローチのほうが、より効果的な結果を生み出します。
人間は、自分の脳内にどのような情報が詰まっているか、意外と把握してはいないものです。それが、人に話している過程で急に浮上してくることもあれば、逆に相手から質問されることで新しい発想に誘導されることもある。
ユーチューブ創設者の一人、スティーブ・チェンによると「YouTube」のロゴや「Broadcast Yourself」のスローガンは、たった1日で生まれたそうです。複数で議論した中で創造された、典型的な「トーク・スルー」の産物です。
「トーク・スルー」のポイントは「生煮え」でいいという点です。人に話す前に完璧でなければと思う必要はない。マーケットを把握していなくてもいい。とにかく人に話すことが重要です。
脳にとっては、言語も一つの運動です。とにかく一度出力しないことには、自分が本当に考えていることや、潜在的な可能性も見えてはこない。情報のインプットとともに、アウトプットも恒常的に行わないことには、その考えが真に自分のものとなることはないのです。