前代未聞! 「ダブル・クロス選挙」がひらめいた瞬間

2017年4月大阪維新の会と公明党との間で都構想の協議推進に向けての合意文書が交わされ、それからは一定公明党の協力が得られていたが、2017年10月の衆議院議員総選挙が終わると、また公明党が非協力的な態度に変わった。公明党は、とにかく「常勝関西」の衆議院6選挙区を死守することが至上命題であり、そのためなら大阪維新の会とも協力関係を結ぶ。しかしこの衆議院6選挙区を死守できれば、その協力関係に熱が入らなくなるという繰り返しだ。ある意味、非常に分かり易い政党だ。

(略)

そこで松井一郎(当時大阪府知事)ら大阪維新の会の執行部は、当初2018年の秋頃までに住民投票をする予定だったが、さすがにそれは無理だと判断し、それでも遅くても大阪府議会・大阪市議会議員の任期である2019年3月までには住民投票をすべきだと考えていた。しかし公明党は全く応じない。松井たちは公明党と政治折衝を繰り返すも、話がつかず、2018年の年末を迎えてしまうのである。

ここで吉村は、今後、事態がどう動くかの予測に力を入れ、自分たちはどのタイミングで何をしなければならないのかのシミュレーションをし始めた。都構想戦略本部に事態推移を予測して自分に報告するよう指示しながら、松井などの維新の会執行部とも協議を始めた。メディアからも情報を得ながら、吉村が今後の事態推移のパターンを整理していったのである。

(略)

吉村はこれらの要素を基に、いくつものパターンを予測した。いわゆるロジックツリーの作成である。政治の動き方については、政治のプロである松井たちにも意見を聞いた。そうすると、あるポイントが見えてきた。

公明党と合意ができるなら、あとは合意を確かなものにする実務的な作業だけでいい。

しかし決裂するなら、4月の統一地方選挙に向けて、爆発的な民意を湧き起こす必要がある。その沸き上がった民意を引き寄せて府議会・市議会で過半数ないしは圧倒的多数を得て、公明党との次の政治折衝に繋げなければならない。何よりも、次の衆議院議員総選挙のときに常勝関西6選挙区を巡って公明党と政治折衝できる環境を整えておかなければならない。

「俺と松井さんを入れ替えるクロス選挙を統一地方選挙にぶつける。そうすれば通常の出直し選挙と異なり、俺と松井さんの任期は4年間さらに延びる。その間に衆議院議員総選挙が必ずある」

吉村の頭に、知事・市長の任期満了前の同時辞任、立場を入れ替えてのダブル・クロス選挙という前代未聞の戦略・戦術がひらめいた瞬間である。単なる思い付きではなく、事態予測をしっかりした上での判断だった。(敬称略、事実に想像を加えたフィクションです)

(略)

(ここまでリード文を除き約2100字、メールマガジン全文は約1万2000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.149(4月23日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【圧勝・大阪ダブル選(3)】なぜ大阪維新の政治は自公政権にも対抗できるのか? これが強さの源泉「都構想戦略本部」だ》特集です。

(写真=iStock.com)
【関連記事】
なぜ民進党はここまでバカにされるのか
公明党が"創価学会員"から批判される理由
リアル告発"総理を支配する闇集団"の実態
「大阪のライバルは東京ちゃう、パリや」
人生に「島流し」の時期が絶対必要な理由