「10回じゃんけんしたら7回勝つこと」の凄み
コンサル出身の並木がそう断言できるのは、かつて2年間、楽天イーグルスの創業立ち上げに参加した際の体験がある。
「僕も多くの少年たちとおなじようにプロ野球選手を夢見た少年でした。仕事をはじめてからも、いつかは野球に関わりたいという思いをずっと持っていました。それでプロ野球に楽天イーグルスの参入が決まった時に、ツテはないものの船出に立ち会いたいと思い、楽天のホームページにある『info@rakuten』宛にメールを送ったんです。文面には自分がどういう人間で、何ができるか。楽天の創業に少しは役に立てるのではないかという思いの丈をつづりました。すると楽天イーグルスの球団社長だった島田(亨)さんから返事が来て、あれよあれよという間に球団運営に携わることがかないました」
球団運営で出会ったのは、それまでの並木の常識を覆す人たちだった。
「島田さんや楽天の執行役員だった小澤(隆生)さん(現ヤフー常務執行役員)を見て、こういう人たちの迫力でビジネスは回っていくんだなって思いましたよ。2人ともロジックなんて二の次でしたから。島田さんは、スタジアムに2万2000人を動員するのが目標ならば、あらゆる手段でそれを達成するために動き、やり切る。小澤さんは、10回じゃんけんしたら7回勝つなという空気をまとっていた。彼らには、プロ野球界を変えたいんだという強い思いがあった。それが人を説得して物事を進めていくパワーになるんだということを目の当たりにしたんです」
もし、ビジネスに成功の方程式があるならば、自分に素直でいること。そして情熱を持てる好きを仕事にすること。そう並木は断言する。
「得意で嫌い」な仕事は「得意で好き」にできる
しかし、だれもが今の仕事があり、好きな仕事に就けるとは限らないだろう。では会社員であれば、どこまで今の会社で頑張るか、どこから転職や起業を考えればいいのだろうか。
「『好きと嫌い』『得意と苦手』という軸がありますよね(図版参照)。右上の『好きで得意』の領域にいるならそのまま突っ込めばいいです。右下の『好きで苦手』ならば、好きだから苦手が克服されるかもしれません」
「ただし、同じくらいに好きなものがあるならばそれを探してみてもいい。左下の『嫌いで苦手』は報酬や人間関係以外の理由では踏みとどまる理由がありませんから、生き方を見直した方が幸せになれるでしょうね。左上の『嫌いで得意』はサラリーマンにありがちなパターンです。得意だからこそ辞めるという決断を下しづらい一方で、嫌いは好きに変換できることは知っておいたほうがいいでしょう」
「嫌いで得意」という場合は、嫌いを嫌いなままだと諦めるのは早合点だ。嫌いは好きに寄せることができるという。
「たとえばサッカーが大好きな20代の男性がいるとします。彼の仕事はサッカーとは無関係のメガバンクで、八重洲口支店に勤務し、日々モヤモヤしながら30社の中小企業の社長を担当しています。このまったくサッカーと仕事がかけはなれた状況にしても活路はあります」