なぜサッカー経験のないオタクを学生コーチにしたのか?
外池氏の改革はまだまだ続く。近々、部のマスコットキャラクターが登場予定だ。運動部のマスコットは、アメリカの大学などではおなじみだが、日本ではほとんど聞かない。ファンを含めて広く社会との接点を作るという意味でマスコットは有効的だという考えが、選手・ビジネスマンの経験が豊富な外池氏にはある。
「キャラクターをオオカミにしました。うちのサッカーはサイド攻撃を得意としています。オオカミは狩りをするときにフォーメーションを取って頭脳的な攻撃をします。それがストーリーです。愛されるキャラにするには今後どうしたらいいか、どんなPRを展開したらいいか、名前はどうするか。これもサッカー部としての重要な活動だと思っています」
さらに「学生コーチ」のポストを新設した。しかもサッカーをしない一般学生コーチだ。その学生(早大生)は去年、おもむろに部のドアを叩いてきたという。
「『分析担当をやらせてもらえないですか』と言ってきたんです。現状のサッカー経験がないけれど、指摘がすごくロジカルな“サッカーオタク”で、『早稲田には緻密なプレーが足りない』とかズバズバ言うんです(苦笑)。選手側はプレーできない人が何を指図するのかと反発する。でも、そういう、いい意味での摩擦がチーム全体の新しいポテンシャルになるんです」
選手の個性と「現在地」を知るための4種類の面談・ミーティング
日々の活動のスタート台になるミーティングにもひと工夫した。部には4種類のミーティングがある。「ワンオンゼロ(無記名アンケート)」と「ワンオンワン(1対1の面談」と「グループ」と「オール」だ。とりわけ外池氏が重視しているのが前者2つだ。
最近の学生は大勢がいる前でほとんど発言をしない。だからワンオンゼロ(無記名アンケート)が有効だ。
「口数が少ない部員でも実はいろんなことを考えていることがあります。無記名だと辛辣なことをけっこう書いてくるんです。そうした少数意見を大事にすると、部員たちのモチベーションが高まっていきました」
春と夏の2回実施するワンオンワン面談も重要視している。1対1だと学生は饒舌だ。集団の中では声をあげるのを躊躇する者も、「何でも言ってきていい」というオープンマインドの外池氏に対してなら言える。
「そうした個人の生の声は、私に多くの気づきを与えてくれました。面談でなくても、直接電話で話すこともよくあります。4種類の面談、ミーティングをするようになり部員の心のありかたがよくわかるようになりました」
今年のシーズンはどんなテーマで挑むつもりなのか。
「去年、4年生を中心にいいチームを作れたけれど、レベルの高いリーグなだけに油断をすると、すぐ2部に落ちる危険性があります。幸い、部員のプレーに対する意識や、ファンやスポンサーなど社会に対する意識も高まり、人間的に成長していると感じるので、さらなる奮闘を期待したい」
外池氏自身も監督2年目はより進化していきたいと考えている。
「チームとしてより強くするというミッションに加え、レギュラー選手ではない者を含む部員90人のマネジメントの課題にしっかり取り組んでいきたい。私には彼らの未来を作っていく責任がありますから」