とはいえ、自然の中でたったひとりで焚き火、食事、テント泊というのはやはり、寂しいのではないか。

「キャンプの“原始的な時間”が好きです」

「今は月1ペースですが、2、3年前までは、月に4、5回は行っていました。仕事の空き時間があれば即キャンプ。夜に現地に到着して翌朝帰ることも珍しくない。なぜ、急な日程でも行くのかといえば、ソロキャンプで心と体がリセットできるからです。

芸人の仕事は一筋縄ではいきません。テレビ番組の制作サイドの意向をくんだり、共演者に配慮したりするので、ピン芸人でも自分勝手にはできません。でも、自然の中でそうした煩わしさやストレスを解消できる。全部忘れられる。だから、寂しいという感情は微塵もなく、ただ自然の中でゆっくりした時間の流れを存分に満喫しています」

家にいたらガスのコンロをひねればお湯を沸かすことができ、スイッチを押せば電気が点くけれど、山へ行ったらそうはいかない。不便な生活を強いられる。だが、ヒロシさんは「シンプルで原始的な時間・空間だからこそ、余計なことを考えなくてすむんです」としみじみ語るのだ。

「ソロキャンプだから、集団キャンプにありがちな『カレーを作らなきゃいけない』とか、『ダッチオーブンで七面鳥を焼かなきゃいけない』とかいう縛りもないです。みんなで楽しむこと自体は悪くないのですが、リーダー的な人や声の大きな人の意見・主張に周囲が振り回されてしまうことがある。僕はそれがどうも嫌なんです。だから、空腹ですぐ食べたいときは、キャンプ先でもコンビニ弁当や即席麺。それでも、全然満足なんです」

同じソロキャンプ派の仲間同士でヒロシさんは山へ行くこともある。ただ、その際は各自がテントを張り、食事を準備する。基本はソロだ。

「ひとりぼっちは不安だという人や、仲間や組織に帰属することが重要だという人にとって、集団キャンプは意味があるけれど、そんな煩わしさは会社で働くときだけで十分なら、休日やオフタイムはソロがいい。それによって、自分を解放させることができるのではないでしょうか」

ヒロシさんは、大好きなキャンプの様子を自ら撮影して、約4年前から動画配信サイト「YouTube」で公開している。自身で撮影・編集を務めたキャンプ動画を月に2本アップし、多くの視聴者(「ヒロシちゃんねる」会員は取材時点で約32万人超)から見られることで広告収入約80万円を得たことがあるなど、芸人とは別の仕事の柱となりつつあるという。時には再生回数が100万回を超える動画もあるという。