まず、共働きのE家で夫が40歳のときに死亡したとします。死亡時に18歳未満の子がいると、「遺族基礎年金」として年100万4400円(妻と子1人の額)と「遺族厚生年金」が年51万3900円支給されます。遺族基礎年金は子が18歳になって最初の3月まで。そのあと、妻が65歳になるまで「中高齢寡婦加算」が年58万5100円支給されます。妻が65歳になると妻自身の年金が支給されますが、夫の遺族厚生年金が妻の老齢厚生年金より多い場合は、その差額が妻の年金に上乗せされます。
なお、遺族厚生年金の額は生前の年収と厚生年金に加入していた期間によって計算されますが、加入期間が25年に満たない場合は、25年(300カ月)加入していたものとして計算されます。早くに亡くなって加入期間がわずかの場合でも、遺族には一定の保障があるというわけです。ちなみに、18歳未満の子がいなければ、夫死亡時に妻が受け取れるのは中高齢寡婦加算と夫の遺族厚生年金、65歳からは自身の年金のみとなります。妻が専業主婦の場合は、共働き夫婦とは異なり、妻は遺族厚生年金を生涯受け取ることができます。
妻が亡くなった場合は年金が少ない
遺族年金についてしっかり認識しておきたいのは、「夫が亡くなった場合に比べて、妻が亡くなった場合は年金が少ない」ということです。
共働き、専業主婦家庭とも、子がいれば遺族基礎年金が出るのは同じですが、中高齢寡婦加算はありません。また共働きの場合に支給される遺族厚生年金は、夫ではなく子に支給され、18歳になるとストップします。さらに、子がいない場合には、遺族年金の支給はありません。
以上のことから、共働きで妻の収入も家計を支えているという世帯では、妻が死亡した場合の経済リスクは大きいといえます。生命保険加入の際など、夫の死亡保障を重視しがちですが、遺族年金が少ない分、妻の死亡保障を手厚くすることが重要な場合があるのです。ケースにもよりますが、子ども1人につき教育資金として700万円程度を準備しておくと安心です。
最後に、今回試算した事例はあくまでもモデルケース。あなたの年金額は、年に1度自宅に届く「ねんきん定期便」で確認できます。老後の計画を立てる第一歩として、ぜひご覧になってみてください。