キャリアと忠誠心をうまく折り合わせよう
社員のキャリアへの忠誠心と会社への忠誠心が相容れないものではないとすると、リーダーはどのようにすれば、社員と会社の関係を双方の利益になるようにできるのだろう。以下に、最も有能な幹部やマネジャーが使っている戦略を紹介しよう。
[1] キャリア開発と会社の目標を結びつける
自分の技能向上に役立つと同時に、会社がその最も困難な挑戦に立ち向かえるようにする専門技能を、社員が習得できるよう手助けするとき、2つの忠誠心はがっちり結びつく。
「直属の部下のキャリア目標について本人とできるだけ頻繁に話し合うよう、マネジャーに勧めよう」と、ビジネス・コーチのゲイル・ランツはアドバイスする。「マネジャーは、部下が自分のキャリア目標と会社の目標とのつながりを見つける手助けをする必要がある。会社の活動を取り巻く、より大きなビジネスの文脈を理解すれば、社員は自分のキャリアを高める方法をより簡単に見つけることができる」。
もちろん、キャリアについての率直かつ頻繁な話し合いは、自分のキャリア目標を達成できないと悟ったとき社員が会社を去るという事態を招くこともある。しかし、そのプロセスがうまく処理されれば、長期的にはすべての当事者が得をするはずだ。
グランサムによれば、チェルコでは評価ツールとキャリア・コーチを使って社員の強みを把握し、それらの能力を会社の利益のために最もうまく活用する方法を見いだしている。また、社員は、上司や上司の上司、キャリア・コーチと積極的にミーティングを持って、会社でのキャリア・パスの可能性を話し合うよう奨励されている。「こうしたミーティングは、パフォーマンス評価のための面接とは別個のものだ」とグランサムは言う。
ある社員が管理職に関心があると言ったとき、彼女のコーチは、「あなたの評価を見ると、あなたの強みは管理以外の分野にあるようだ」と指摘した。すると彼女は、管理職に関心があるのは、何よりもそのポジションの給与の高さに魅力を感じるからだと認めた。キャリア向上への彼女の関心やコミットメントと彼女の学歴や強み――細かいことによく気がつく、ルールを守る、辛抱強いなど――を踏まえて、会社は彼女に売り上げアナリストのポジションをオファーした。彼女はこのポジションで会社により大きな価値を提供するとともに、新しい挑戦に取り組むことになった。このポジションは前のポジションの数等級上にランクされていたので、彼女はより高い給与を手にすることにもなった。
きわめて優秀な社員については、その能力開発を支援して何の得があるのかと抵抗を示すマネジャーもいる、とグランサムは言う。
「彼らは超一流の部下を手放したくない。しかし、抵抗がある場合には、われわれはマネジャーにビジネス・コーチと話をさせ、長期的な利益をより深く理解させる」
部下の能力開発を支援すればマネジャーの最善の利益になる、とグランサムは指摘する。別のマネジャーの超一流の部下がこちらの部署に移りたいと望むようになるからである。