「いきなり!アイス」発売の真意

また、経営企画室の新設や「いきなり!ステーキ」事業部の拡大など、組織改編にも取り組んでいる。これによって新たなポストや管理職が多く生まれ、昇進・昇格が早いことも社員のモチベーションにつながり、採用面での強み、会社の活性化になるわけだ。

物件についても、デベロッパーや小売業から出店要請が絶えず、2018年は200店以上も出店した。19年もペースは落とさず、210店を計画しているという。こうしたポテンシャルを考えれば、「いきなり!ステーキ」にはこの先、まだまだ成長の余地があるといえるだろう。

業態自体も進化を続けている。私は「業態は生き物である」が持論だが、それだけ多種多様に変わっていくのが飲食業界である。ペッパーフードサービスもこれからはステーキだけでなく、様々な業態にチャレンジしていくのではないだろうか。

例えば、昨年末から一部の店舗で「いきなり!アイス」という商品を販売し始めた。同店初となるデザートメニューだが、これは単なる商品ラインの拡大ではなく、新しい業態を想定してのことだと一瀬社長は語っている。これがもし大ヒットするのであれば、アイスクリーム店を始めることになるかもしれない。

「肉の仕入れルート」を生かさない手はない

店のスタイルも、これからは立ち食い形式だけでなく、着席して食べるローテーブルも導入していくだろう。既に都心の店舗では始まっており、滞席時間が長い分、客単価は既存店の倍以上の5000円前後を想定している。アペタイザー(前菜)から始まりデザートまで楽しめる、いわばアッパーステーキレストランのディスカウンターのような新しい業態を検討しているようだ。さらには、フィットネスクラブと組んで、レストランとマシンルームを同一店内に設置するアイデアもある。体作りに必須な良質のたんぱく質を、トレーニング後すぐに取れるようにしようという、これもまた今までにない新しいスタイルの店といえるだろう。

個人的な意見を言わせてもらうならば、肉の切り落としなどを活用したビーフシチュー店などもアリなのではないかと考えている。肉の仕入れルートは既に確立しているのだから、それを活用しない手はない。

出店ペースが非常に速いことを懸念する声もある。しかし、売り上げが良くない不採算店舗を、こうした新業態の店に切り替えていくような戦略を採ることもできるだろう。業態が違えば客層も違う。同じチェーン同士で客を取り合うことにもならずに済むはずだ。