「悪い話になると連絡をよこさなくなる」
2.ダンマリ決め込み営業マン

精密機器メーカーのB氏が続ける。

「サプライヤーの納期が遅れるとなぜ、バイヤーが代わって社内に謝るのか。バイヤーはときにはサプライヤーの側に立って話さなければならないからです。そのため、“おまえたちはうちの社員ではないのか”“何かもらっているのか”、揚げ句には“おまえらは社内外注だ”とまでいわれます。

われわれは会社にとって一番いいものを調達しようという思いを持って買っているにもかかわらずです。その思いを営業マンも共有してほしい。私の場合、幸運にも、仕事の悩みを相談できたのは取引先の営業マンでした」

「“おまえはサプライヤーの味方か”といわれる」「社内から見れば、バイヤーはサプライヤーの代役になる」……等々、同様の話は今回取材したバイヤーたちから異口同音に聞かれた。特に「何かもらっているのか」の類の勘ぐりはよくされ、ウンザリするという。

「だから、営業マンは悪い話をバイヤーに隠さず話してほしい」と日本HPの赤岸氏は話す。

「社内に向けてサプライヤーの側に立つバイヤーとしては、サプライヤーで何か問題が起きたら、営業マンにはいち早く伝えてほしいのです。そうすれば、われわれバイヤーが社内調整に動くことができるのです」

バイヤーが置かれた社内での立場を察知し、問題発生時にも迅速な対応をとれば、バイヤーの社内調整力を味方につけて対処することができる。ところが、現実にはそれができない営業マンが多いようだ。産業機械メーカー、古河産機システムズ資材課副課長の渡邉珍彦氏が話す。

「営業マンは悪い話のときほどダンマリを決め込む。納期が守れないなら、守れないといってくれれば、こちらも次の手が打てます。ところが、連絡をしても返事がなかなかない。これが一番困る。バイヤーは社内的には営業マンの側に立つのに見捨てられたような孤独感すら感じます」

営業マンにはバイヤーの悲痛な声が聞こえているだろうか。

(松田健一=撮影)