※本稿は、プレジデント書籍編集部著、宮瀧交二監修『元号と日本人』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
免許証は「西暦のみ」への否定的な意見
近年、「日本でしか通じない『元号』は廃止し、グローバルに使える『西暦』に一本化すべきではないか」という意見が出ているのを耳にする。実際、キリスト教系の私立大学では、願書や授業で使う書類などに記載する日付は、西暦で統一しているところもあるようである。あなたはどう思うだろうか。
元号にまつわるさまざまな議論が活発になっている最中、「運転免許証の期限、西暦・元号併記に」という記事が目にとまった(2018年12月22日付朝日新聞)。
警察庁は、日本で運転免許証を保有する外国人が増えていることを受け、免許証の有効期限をこれまでの「元号」から、外国人にもわかりやすい「西暦」に表記を一本化する方向で検討を重ねていた。
しかし、パブリックコメントを実施したところ、2万件の意見が寄せられ、その8割が西暦だけの表記に否定的だった。この結果を踏まえて、警察庁は西暦に括弧付きで元号を併記することを決めたという。
「平成生まれです」の方がピンとくる
このニュースは非常に興味深いものだろう。ある意味、最も元号一本化を主張しそうな警察庁のようなところが、西暦一本化で進める判断をしていたというから驚きだ。
だが、市民の間には西暦だけではなく、元号も記してほしいという声も多かったということである。それだけ元号が市民生活に馴染んでいるということであろう。たとえば、「1991年生まれです」と言われるより、「平成生まれです」と言われたほうがわかりやすく、ピンと来る人が多いということだ。元号と西暦が入り交って使われている、現在の日本の状況を象徴している出来事である。
では、西暦ではなく元号に一本化すればいいのだろうか。「歴史的な伝統に基づき、日本古来の元号を大切にするべき」といった意見も聞こえてくる。