自分の葬式の出席者を想像する
『7つの習慣』と出合ったのは22歳のころです。私は日本で2年間、ボランティアで宣教師をしたあと、アメリカに戻って大学に復学。将来についてはまだ何も決まっていなくて、これからの生活をどうしようかと考えているタイミングでした。英語版は1989年が初版です。じつは私の母は本が出る前から「7つの習慣」セミナーに出席していました。その点にも背中を押され、いまの自分に合う情報が書いてあるのではないかと手に取りました。
一読して印象に残ったのは、第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」のミッション・ステートメントのつくり方。自分のお葬式を想像して、参列者の記憶にどのように残りたいのかを考えようというアドバイスが載っていました。自分の生き方は自分で変えることができる。そう気づいて、勇気をもらえたような気がしました。
また同時に、目指すべき目標もできました。著者のスティーブン・R・コヴィー博士は、研修を行うコヴィー・リーダーシップセンターと、プランナー(手帳)を提供するフランクリン・クエストという会社をつくっていました。私はもともと人の役に立つ商品をつくる会社で働きたいと考えていたので、『7つの習慣』を読んで、この2つの会社で働くことが目標になりました。
最悪のタイミングで社長に就任
2つの会社はのちに合併してフランクリン・コヴィーになります。私はアメリカでも日本でもフランクリン・コヴィーの採用試験を受けましたが、それでもなかなか採用してもらえませんでした。そして2008年にようやく入社がかないました。しかも、いきなり社長としての採用です(笑)。途中で諦めなかったのは、人の役に立つ仕事をしたいという決心が揺るがなかったから。これも『7つの習慣』のおかげです。
念願かなってフランクリン・コヴィー・ジャパンの社長になりましたが、じつは社長に就任したのは最悪のタイミングでした。リーマンショック直後で企業が研修費をカットし始め、その影響を直接受けたのです。でも、どんなときもリーダーシップの基本は同じです。例えば、「green and clean」という考え方。
コヴィー博士は、小学生の息子に芝生の生えた庭の片づけを頼む際、やり方を細かく説明することなく、隣の家のきれいな庭を示して、「この庭のようにgreen and cleanにしてほしい。やり方は自由」といって任せたそうです。経験の足りない人には細かく指導することも必要ですが、基本的には本人の主体性に任せたほうがうまくいくと考えています。
お客様との関係では、第4の習慣「Win-Winを考える」、第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」を大事にしました。つまりお客様にとってのWinは何かをまず理解することを、社員たちには徹底してもらったのです。