工場の責任者や製品開発チームのリーダーは、優秀な人事担当幹部になりえます。マーケティング部門や営業部門の責任者も適任かもしれません。必要な人材は、人間の性質や自社の業務について深い知識を持ち、それに加えて、厳しい経験から生まれた一種の威厳と知恵を備えている人物です。
実際、最も優れた人事担当者は、めったにない組み合わせの資質を併せ持っています。彼らは牧師の役目も、親の役目も果たせるのです。彼らは牧師のように社員の話を聞き、相談に乗り、進むべき道を示します。彼らはゆるぎない自信を持ち、それによって組織全体の信頼を勝ち得ています。彼らは対立や相違点を巧みに解決します。個人やチームが困難な時期を乗り切る手助けをします。彼らはまた、親のように支援と教育を与えてくれますが、あなたが軌道から外れたら遠慮なく叱りつけます。
公平を期して言うと、あなたが質問の中で描き出されたような人事部が実は標準なのです。私たちが唱えているような人事部はめったにない例外です。それはなぜか。人事部がえてして無用の存在になるのは、ほとんどのマネジャーが「人事マン」になるのは簡単だと思っているからです。
事実、何人かのマネジャーに「自分は生来、人事が得意だと、つまり人のマネジメントを心得ていると思っていますか」と尋ねてみてください。請け合ってもいいですよ。99%が得意だと答えるはずです。彼らは、上司の見方ではない、独立した人材評価という形で人事部の助けを得る必要があるとは思っていません。しかし、彼らがきわめて特別な人間でないかぎり……つまり、牧師の資質と親の資質を併せ持つタイプでないかぎり……彼らにはそうした助けが必要なのです。
人事部を軽視することは多くの企業で流行りになっています。栄光は必ず人事部以外の人間のものになります。たとえば、自動車会社ではデザイナー、コンサルタント会社では多くのクライアントを獲得する人間です。しかし、人事部が花形社員で構成され、職務を遂行するのに必要な敬意と資源を与えられれば、企業ははるかにうまくやれるのです。
人事部は会社を勝利させるために最高の人材を見つけ、育てる手助けをしているのです。それ以上大切な仕事があるでしょうか。