個人ではなく文化、薄いデータより厚いデータを見る

その文化や社会的文脈は、人々によって共有された、言葉や数字では表現仕切れない暗黙知そのものだ。それを探求し、洞察するには、表層的な市場調査の形式知のデータなどをサイエンスとして分析するばかりでなく、自らを社会的文脈に投じ、そこで共有されている暗黙知を直観するというアートの世界に入らなければならない。そのセンスメイキングをビジネスにおいて実践する際の具体的な方法として、著者は次の五つの原則をあげる。

(1)「個人」ではなく「文化」を

顧客を、経済的な計算にもとづいてのみ行動する「合理的な個人」としてではなく、現実の社会的文脈=文化と切り離せない「心で動く文化的存在」としてとらえなければならない。

(2)「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を

データも、顧客の行動の痕跡から得られる市場分析の定量的な「薄いデータ」(典型がビッグデータ)だけでなく、顧客が社会的文脈=文化とどのような関係性を持っているかという定性的な「厚いデータ」に目を向けなければならない。

(3)「動物園」ではなく「サバンナ」を

「薄いデータ」から論理分析的に顧客像を抽出するのではなく、日常の「生活世界」に生きる顧客を「ありのまま」にとらえなければならない。

これらの(1)~(3)の原則は、顧客に対するアプローチの仕方を説くのに対し、次の(4)~(5)の原則は、つくり手もしくは売り手に求められる発想のあり方を示す。

生産より創造性、GPSではなく北極星

(4)「生産」ではなく「創造性」を

これまでにないものをつくり出す創造的なアイデアを生むには、発想を非連続にジャンプさせる“跳ぶ仮説=ひらめき”が求められる。これを「アブダクション(仮説生成)」と呼ぶ。アブダクションは、市場環境を科学的に分析するのではなく、社会的文脈に入り込み、自らを環境と一体化させるなかで立ち現れる。

(5)「GPS」ではなく「北極星」を

つくり手や売り手は、「薄いデータ」によるアルゴリズム的思考でその都度、分析的に解を導き出すことより、社会的文脈のなかで自分たちはどこに向かい、顧客とどう向き合うのかという立ち位置を明確にしなければならない。要はデジタルだけでなく、アナログの世界観を大切にしろと。