「旅行には行くほう」だという9人の現役大学生の本音
原田さんは、ここ数年で、最近の若者、特に大学生の「旅行観」に大きな変化が見られるようになっていると指摘します。それらを明らかにすべく、「旅行には行くほう」だという9人の現役大学生に集まってもらい、若者の旅行観について議論しました。
現代の若者は旅行に何を求め、旅でどんな消費活動を行っているのでしょうか。座談会の模様を3回にわけてお届けします。第1回は「旅のイメージ」についてです。
正田郁仁 法政大学 経営学部 2年
神谷菜月 明治大学 経営学部 3年
須田孝徳 早稲田大学大学院 商学研究科 修士1年
牧之段直也 早稲田大学 政治経済学部 3年
小野里奈々 法政大学 社会学部 2年
高貫遥 明治大学 経営学部 3年
今野花音 上智大学 文学部 3年
佐藤美梨 慶應義塾大学 文学部 2年
浅見悦子 青山学院大学 地球社会共生学部 3年
海外旅行に行くかどうかは「親」が鍵
【原田】今年7月にJTB総合研究所が発表した調査結果(※)によると、ここ数年で、今まで海外離れと言われていた若者たちが、少しずつ海外旅行に行くようになってきているんだけど、みんなはどう思う? 景気が良くなって、バイト代が上がってきているからかな?
※年代別平均旅行回数を2000年と2017年で比較した場合、19歳未満の男性は年1.0回から1.3回、19歳未満の女性は1.3回から1.4回と増加している。
【浅見】私のまわりの大学生はけっこう海外旅行してますよ。
【高貫】留学する子もまわりで増えてきたし、「海外に行く若者が減っている」と言われても、実感はあまりないですね。
【原田】マクロデータで見ると、まさに僕の世代、現在アラフォーであり、就職氷河期世代でもあった「ポスト団塊ジュニア世代」が、最も「海外に行く若者」だったんだよね。それからさらに景気が悪くなり、海外に行く若者がずっと減っていったんだけど、この数年で少し若者の海外離れが復活してきているんだ。
もっと正確には、全員が海外に行こうとする時代から、行く人と行かない人が明確に分かれる時代に完全に変わった、と言えるかもしれない。都市か地方か、所得が多いか少ないか、海外に行くモチベーションが高いか低いかで、若者の「海外経験格差」が非常に大きくなっているんだと思う。
東京では偏差値が「MARCH」クラス以上の大学生は、年を追って海外留学に行く子が増えている印象がある。今回のみんなのようなある程度高学歴な若者の実感からすると、「若者の海外旅行離れ」といわれても実感がないんだろうね。
【神谷】確かに私の体感だと、海外へ行く子はよく行くけど、行かない子はパスポートすら持っていません。これはいい大学の学生の中でも二極化していると思います。
また、私のまわりでは、よく海外へ行く子の中でも、特に海外に対するモチベーションが高く、海外旅行に行くためにバイトに力を入れているのは、地方からの上京組に多い気がします。そして、その中でもひとりで海外旅行を楽しむ子は、上昇志向が強めかもしれないですね(笑)。
※神谷さんの発言について、表現を初出時から修正しました。(1月22日11時30分編集部追記)
【原田】この前、早稲田大学の総長とお話していたら、「早稲田の学生の70%が東京近郊出身になっている。多様性が減っている」と嘆いていた。そして、他の東京の大学でもこうした傾向になっているらしい。戦後、日本の政治の失政で、あらゆるものを東京に一極集中させてきたので、人口減少社会である今でも東京の人口は増え続け、今、代々東京出身の江戸っ子の若者が非常に多くなっている。現在41歳の僕の時代の慶應大学は地方出身者が周りにごろごろいたけど、今はだいぶ少なくなっているようだね。
代々東京出身者が増えるということは、「東京の田舎化」が進んでおり、東京において地元愛の強い「マイルドヤンキー」が急増している。マイルドヤンキーだらけになっている東京より、こんな時代にわざわざ地方から上京してくる若者の方がモチベーションが高くなっているのかもしれないね。
【佐藤】友達で、かたくなに「海外旅行には絶対行かない」って子がいて、行くのは大学の卒業旅行だけ。夜勤のバイトもしてる子なので、単純にお金も興味もない。
【高貫】お金を貯めたいから行かない、という人は結構多いのでは。
【原田】昔はお金なくても車を買ったり、海外に行ったりしていたのが日本の若者像だったんだけど、今の若者は無理をしなくなっているよね。