プロでも失敗する。大事なのは「損切り」

――上がっている銘柄を買うというのはわかりますが、初心者は株価がピークのときに高値掴みしそうで怖いのではないでしょうか。

【cis】高値掴みするリスクは、初心者でもプロでも変わらないと思います。

cis『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA)

それは僕にしても同じで、高値掴みをすることも結構ありますけど、損切りが早いので大きな痛手を受けずにすんでいるだけです。ですから高値掴みをしないように努力するのは無駄だと思います。上がっている株を買って利益を最大化する。でも、下がったら早めに損切りをする。リターンとリスクのバランスをとることが大事です。

勝率にもこだわらないほうがいいですよ。大事なのはトータルの損益です。勝率が8割でもトータルがマイナスなら資産は増えません。僕の場合、銘柄ごとに勝敗を見ると、勝率は3割くらいだと思います。7割はトントンかちょい負け。それでも、負けた額の10倍、20倍の金額で勝つことがあるから、トータルでプラスになるのです。

資金が多いほど投資効率は下がる

――そうはいっても投資の世界にはプロがたくさんいますから、素人には太刀打ちできませんよね。

【cis】そんなことはありませんよ。だって僕らは自分のお金を投資しているわけですから真剣でしょう。

人のお金を運用しているプロの人は、うまくいっても失敗しても大きく生活は変わりません。だからプロの中にはルールを決めて、その通りに投資をする人が少なくないのです。機械的に売買するだけですから、個人でも勝てるチャンスはありますよ。

――やはり、投資資金は多いほうが有利ですか。

【cis】それは逆ですね。投資資金が多くなるほど投資効率は下がります。むしろ資産総額が1500万円以下であれば、それを数倍にするチャンスは無数に転がっています。ゲームでレベル1をレベル10にするようなもので、誰でもできると思います。僕がいまの資産を1兆円に増やすのはかなり不可能に近いですから。

cis(しす)
個人投資家
1973年3月生まれ。2018年11月現在、資産約230億円。大学4年生の2000年夏に口座を開き300万円で株式投資を始める。01年法政大学卒業後、親族が経営する企業に就職。02年デイトレを開始。一時期資産を104万円まで減らすもスタイルを変えてからは勝ち続け、資産6000万円で04年6月に退職。以後専業トレーダーとして04年内に2億円、05年内に30億円弱の資産を築き、トッププレイヤーの仲間入りを果たす。その取引の影響力の大きさから「一人の力で日経平均を動かせる男」とも言われる。
(聞き手・構成=向山 勇)
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