ところで私は、若いビジネスパーソンがあまり本を読まなくなったことに、危惧を抱いています。ベンチャー経営者や起業を目指す若者なら、なるべく多くの名著に触れるべきです。というのも、ビジネスで成功しない人は往々にして、「知識がない」「勇気がない」「徳がない」という「三無」であり、「本を読まない人=三無」だからです。

ビジネスには「先を見通す力」が不可欠です。それを磨くにはまず本をよく読み、知識を身につけなければなりません。ただし、知識があるだけでは足りず、「知行合一」的にそれを実行に移す勇気も必要です。さらに、経営者には他人を引きつける“徳”が求められます。徳がない人には、支援してくれる人材も資金も集まりません。

三無を解消するには、「古今東西の古典を読むこと」が最適といっていいでしょう。目先の有益な情報が欲しくて、ハウツー本にばかり頼るのは感心しません。古典には、歴史の篩(ふるい)にかけられた先人たちの知恵が詰まっています。先見性を養うための知識が得られるだけでなく、実行力や人徳を高めるのにも役立ちます。

さらに「自分がもし経営者だったら、どのように活かすか」と考えながら本を読み進めると、実際のビジネスシーンでの行動も変化してきます。そうしたなかで、本書は世界中の経営者から支持されてきたロングセラーで、「実践経営学の古典」ともいうべき名著です。ぜひ一読してみてください。

北尾吉孝(きたお・よしたか)
SBIホールディングス 代表取締役社長
1951年、兵庫県生まれ。74年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。野村證券事業法人三部長などを経て、95年ソフトバンクに入社、常務取締役に就任。99年より現職。SBI大学院大学の学長なども兼務する。
(構成=野澤正毅 撮影=石橋素幸)
【関連記事】
アマゾンが10年以内に失速する5つの理由
金融業界175社「平均年収ランキング」
"メンタルが強めな人"にある3つの超感覚
日本の生産性が米国より3割低い根本原因
人脈が広い人がやっている「密かな努力」