仮想通貨口座は、とくにリスクが高い
とりわけリスクが高いと伊勢田弁護士が指摘するのは、仮想通貨だ。値上がりして評価額が多額となれば相続税の申告義務が発生する可能性があるし、一方で放置しているうちに値下がりすることもある。保有する仮想通貨を入れておく「ウォレット」の取り扱いにも注意が必要だが、取引している本人以外の家族は、現金化の方法すらわからないことが多い。
「たとえば『億り人』と呼ばれるような、億単位の仮想通貨を保有される方が亡くなった場合、税務調査などで巨額の相続税の支払い義務を指摘されるかもしれません。それなのに、遺族がUSBメモリのような『コールドウォレット』を誤って捨ててしまい、現金化できないということもありえます」(伊勢田弁護士)
FXやオンラインでの商品先物取引、証券の信用取引などでも、大きな損失が出たタイミングで相続が発生した場合には追加証拠金を払わなければならなくなる可能性がある。
「FXの場合、契約者の死後に為替が大幅に変動し、その相続人が最大100万円程度の追加証拠金を支払った事例があるようです。こうしたリスクの高い取引は、早く把握して決済してしまうのが望ましいですね」(伊勢田弁護士)
このほか、被相続人が契約していた有料サービスの解約、クラウドサービスに預けていたデータの回収、相続とは離れるが家族のデジタル写真などの回収なども、「デジタル相続」で考慮が必要なポイントだ。
「オンラインサービスは民法上はあくまで『契約』(債権)ですので、デジタル機器のような『物』の相続とは少し扱いが変わってきます。もしその契約が、故人だけがサービスを受けることができるという『一身専属』契約であった場合、当該サービスを遺族が引き継いで使うことはできません」(伊勢田弁護士)
●銀行・証券口座
どこの銀行や証券会社に故人のオンライン口座があるかを把握するのが大変。郵送物が手がかりになる例も。自動引き落としや積み立ての解約、信用取引の清算にも注意。
●FX(外国為替証拠金取引)
口座把握の難しさは銀行・証券と同様。株のような値幅制限がなく、解約のタイミングによっては損失が出る。大きな損失が出ていた場合、追加証拠金の支払いを求められる可能性も。
●仮想通貨
業者からの郵便物等がないケースが多く、口座の把握が難しい。所得税や相続税の申告、「鍵」を保存した記憶媒体「コールドウォレット」の扱いなど、注意すべき点が多い。
●その他
各種有料サービスの解約、クラウドサービスに預けたデータの回収など。相続とは離れるが、写真データやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)アカウントの整理も。