しかし払いすぎた医療費を取り戻すには組合健保や協会けんぽなど、加入する医療保険に高額療養費の申請をする必要があります。ところが払い戻しを受けられるのは申請から3~4カ月後です。そこでつくられたのが患者の所得区分を証明する「限度額適用認定証」なのです。これを医療機関の窓口で提示すると、最初から支払限度額まででよくなり、オーバーした分の医療費は支払わずにすみます。最終的には負担する金額は同じでも、立て替え払いになるか否かでは、貯金を取り崩すなど家計のやりくりにも響きます。
この認定証は、使うか使わないかわからない状態でも申請して入手することができます。入手理由を聞かれることはありますが、「時期は未定ですが、今後入院する可能性がゼロではないので」というあいまいな理由であっても発行してくれます。私が複数の国保、協会けんぽに確認したところOKでした。
限度額適用認定証は1度申請すると、最長1年間使えます。私が調べた限りでは、申請月の初日から初めて到来する7月末日まで有効とするところが多いようです。通院治療でも使えるようになっていますので、転ばぬ先の杖として、申請しておくと急な入院に対応できます。
高額療養費はその月の1日から月末までの保険診療費が対象になることは述べましたが、どうせ入院するなら入院期間がふた月にまたがらないようにするのがベスト。緊急入院などでは避けようがありませんが、予定の立つ手術や高額療養費の適用となる抗がん剤治療を行う場合も、できるかぎり月の初めになるように医師に相談してみるのもいいでしょう。
窓口で提示すると最初から支払限度額まででよくなる
柳澤美由紀(やなぎさわ・みゆき)
家計アイデア工房代表
CFP認定者。家計の見直し相談を中心にマネーコラムの執筆・監修、講演を手がける。『書き込み式 老後のお金の「どうしよう?」が解決できる本』など著書多数。
家計アイデア工房代表
CFP認定者。家計の見直し相談を中心にマネーコラムの執筆・監修、講演を手がける。『書き込み式 老後のお金の「どうしよう?」が解決できる本』など著書多数。
(構成=吉田茂人 写真=iStock.com)