モテ指南より「わかる」が大事
このジャンルにいち早く力を入れているのが、KADOKAWAだ。2017年4月から18年10月末までの1年半に「メンヘラ恋愛本」を6冊刊行している。その1冊目が、前出の『好きとか遊びとか本気とか浮気とか駆け引きとか、もうどうでもいいから愛してくれ』だ。担当編集の植田真衣さんは、「ツイッターのダイレクトメッセージで著者を口説きました」という。
「ツイッター発の恋愛本は数年前から好調でした。代表作は『僕の隣で勝手に幸せになってください』(蒼井ブルー著、2015年/KADOKAWA)や『だから、そばにいて』(カフカ著、2015年/ワニブックス)です。そうした状況の中で、“メンヘラキャバ嬢”を名乗るみやめこさんのツイートが面白いと思い、『本を書くことに興味はないですか?』と打診したんです。結果、発売1週間で大型重版がかかり、手応えを感じました」(植田さん)
その後、次々とツイッターから著者をスカウト。若い世代に支持されている人気アカウント発の本をつくるうちに、ジャンルが形成されていった。
ネットより書店での購入割合が高い
ネットに親しんでいる10代前半~20代前半が読者層だが、まだクレジットカードを持っていない学生が多いため、ほかの書籍より書店での購入割合が高いという。
『好きな人を忘れる方法があるなら教えてくれよ』を手掛けた編集者・間有希さんは、「読者の中には、お小遣いを貯めて買ったという人、3~4軒の書店を回ってようやく手にした人、また『初めて自分のお金で買った本』という人も多く、本への思い入れが強いんです」という。
買った本の表紙や自分の心に響いた言葉のページを写真に撮り、著者宛にツイッターで感想と一緒にリプライを送る。編集側もそうした需要をくみ取り、表紙は「とにかくかわいくて、写真映えするもの」(植田)を意識した。写真に撮っても読みやすい、巨大な文字でごく短文を載せたページが差しこまれている本もある。いわば「フォトスポット」が設けられているわけだ。
「ツイッター発の著者は、短い言葉で伝える能力が非常に高いので、彼女たちの文章はこうしたデザインによく映えます。おもしろいのは、パソコンを持っていなかったり使い慣れていなかったりする著者が多いので、ワードやテキストファイルではなく、LINEで文章が入稿されてくることですね」(間さん)