「年間3分の2は海外」のゴーン氏は「日本の居住者」か
通常、個人が3年間で計1億円以上の所得を隠しているとみられた場合、国税当局は査察と呼ばれる強制捜索でたまり(隠し資産)を見つけ出し、脱税(所得税法違反)の罪で検察庁に告発する。
ただし脱税で立件するにはゴーン氏を日本の居住者と認定する必要がある。ゴーン氏の国籍はブラジルとみられ、年間3分の2を海外で生活したという。本当に課税ができるのか。国税当局はこれまで1年の半分以上を海外に滞在していた人物に課税したことがある。
脱税罪以外にも「実質犯」には特別背任罪や業務上横領罪がある。逮捕からおよそ20日後の勾留満期までに東京地検特捜部はどんな容疑でゴーン氏を再逮捕するか。当局の動きに注目だ。
「日産の統治体制の異常さ」という指摘は遅すぎる
新聞の社説はどう書いているか。ゴーン氏が逮捕されたのは月曜日の11月19日。翌20日付の社説で取り上げたのはブロック紙の東京新聞(中日新聞東京本社発行)だけ。各紙は翌々日の21日付で一斉に書いた。それだけ各紙にとって「ゴーン逮捕」は寝耳に水だったわけだ。
24日付の日経新聞の社説はこう書き出している。
「日産自動車がカルロス・ゴーン容疑者を会長職から解任した。有価証券報告書の虚偽記載容疑でゴーン元会長本人が逮捕された現状を踏まえれば、解任は当然だが、企業統治の不全という日産の抱える問題がこれで消えるわけではない。透明性の高い経営の仕組みを早急に整える必要がある」
「世界中が驚いたゴーン容疑者の逮捕劇から5日がたち、改めて浮かび上がってきたのが日産の統治体制の異常さである」
「企業統治」を持ち出すのは、読者層に企業の幹部が多い日経らしい。事実、日経の記者は企業の大型合併などのスクープをものにしてきた。日産の内部事情やゴーン氏の「私物化」について通じていた記者はいなかったのだろうか。ゴーン氏が逮捕された段階で日産の統治体制を「異常」だと指摘するのは、日本の経済を専門にする新聞社としては遅すぎる。