また、舌を支える筋肉の量が落ちると、いびきや無呼吸になる可能性が高くなるため、「口の周りや舌の筋肉を鍛える『いびき体操』も効果がある」と語るのは大場氏だ。舌も筋肉なので、脂肪もつく。同じ肥満度でも、舌、特に舌の根元に脂肪がついている人ほどいびきをかきやすい。「いびき体操」で舌を支える力を強くして、あおむけで寝ているときでも舌やのどの筋肉が下がってくることを防ぎ、気道を確保できるようにする。

睡眠時無呼吸症を伴わない単純ないびきであっても「無意識のうちに自分や周りの人の睡眠を阻害しているし、いびきによる振動が、動脈硬化の可能性を高めるといった海外の実験結果もある」と宮崎氏は言う。さらに、進行すれば睡眠時無呼吸症になり、重篤な疾患につながる可能性が高まる。宮崎氏は「『病気は夜つくられる』とも言われる。夜寝ていて、知らないうちに病気が進行してしまうことがある」と話す。大場氏は「いびきは必要なケアをすれば改善できるし、研究が進んでいて治療方法も広がっている。深刻な病気につながる睡眠時無呼吸症が隠れていることもあるので、気づいたら早めに病院を受診してほしい」と話す。

▼どこでも簡単にできる!「いびき体操」8ステップ
ブラジルのギマラエス教授が提唱する「いびき体操」。体操を行うことで、口の周りや舌の筋肉を鍛え、舌の支えを強くすることで、寝ているときに舌が落ちてのどの奥の空間が狭くなることを防ぐ。
(注)神経学的に異常のある人や口腔内・顎に異常のある人は医師の指導の下に行う。
(注)体操はいびき・睡眠時無呼吸症の治療を補助するものです。

(1)舌を前に出す
口を自然に開け、ゆっくり2回ほど舌の先をぐっと突き出す。
(2)舌を回転させる
舌の先をほほの内側に押しつけ、大きく円を描くように舌を回し、逆回しで戻す。
(3)舌を持ち上げる
上顎に舌を押しつけるように、2回ほど舌を持ち上げる。
(4)舌をそり返す
舌の裏側を返すようにして、2回ほど行う。
(5)口蓋垂(のどちんこ)を上げる
舌をぐっと下げ、のどちんこを上げる。鏡を見ながら、あくびをするときの要領で動かすと上がるのがわかりやすい。
(6)口をすぼめる
ほほにへこみができるくらい強く、口をギュッと2回すぼめる。
(7)口に指を入れてすぼめる
口の中に指を入れ、指をくわえるようにして、左右2回ずつ口をギュッとすぼめる。
(8)口をつり上げる
口を少し開け、左右2回ずつ口の端に力を入れて、つり上げる。
【いびき体操の注意事項】
●できるだけゆっくり。無理をしない。
●1回3セットから。
●1日3回、朝昼晩。
●半年から1年は続ける。
●口は大きく開けなくてもいい。
●やりすぎて舌や顎を痛めないように。
※大場氏への取材をもとに編集部作成。