▼歯ぎしり・噛みしめ
→頭痛、肩こり、歯周病、顎関節症の原因に

仕事に集中で、強い「食いしばり」が

歯ぎしりや食いしばりも、睡眠の質を低下させる大きな要因の1つだ。元東京医科歯科大学顎関節治療部長で、木野顎関節研究所所長で歯科医師の木野孔司氏によると、歯ぎしりや食いしばりには大きく4つの悪影響があるという。

1点目は、歯を痛めてしまうことだ。夜間の無意識の歯ぎしりや食いしばりは、昼間に意識的に行う食いしばりの何倍もの力がかかる。このため、歯が折れてしまうこともあるという。2点目は、筋肉を使い続けるため頭痛や肩こりを引き起こすこと。3点目は、歯周病の悪化だ。強い力で噛みしめて歯に力を加えるため、歯周組織を破壊してしまう。「歯周病の最大の悪化要因は、夜中の歯ぎしりや食いしばりだと言われている」と木野氏は指摘する。4点目は、関節や筋肉を傷めるため、口を開けたりものを噛んだりすると痛みが出たりするなどの顎関節症につながることだ。

歯ぎしりや噛みしめは、誰にでも起こる。木野氏は「来院者を見ると、女性のほうが歯ぎしりの訴えは多いが、海外の調査結果などから見ると、おそらく男女差はないだろう。女性のほうが健康意識が高い傾向にあるためではないか」と話す。

「夜間の歯ぎしりや食いしばりのメカニズムは、完全には解明されていない」と木野氏は説明する。

本来人間には、上の歯と下の歯が触れると、離そうとする反射の力が働くようになっている。このため歯と歯の接触時間は、24時間のうち20分未満になるはずだ。しかし、パソコンの作業や勉強、筆記、手元の細かい作業などを集中してやっていると、無意識に歯を食いしばってしまう。この状態が続くと、歯と歯が接触している状態に脳が慣れてしまい、歯と歯が触れている状態、つまり噛みしめが癖になってしまう。これが、TCH(歯列接触癖)だ。夜間に歯ぎしりや食いしばりがある人のほとんどが、TCHという癖を持っていることがわかっている。