短期間で需要が急拡大する展開は見込みづらい

映像の美しさ、迫力といった点で4Kテレビ放送に関心を持つ人はいる。ただ、価格、買い替え需要に影響を与える政府の取り組みなどを考えると、短期間で需要が急拡大する展開は見込みづらい。

多くの人々が感じているのは、技術の進歩とともに映像がきれいになるなら、使っているテレビが故障した際に買い替えればいいということだろう。言い換えれば、現時点でテレビを買い替えたとしても、買い替えなかったとしても、消費者の満足度は大して変わらないということだ。8Kテレビの価格が低下すれば、4Kの魅力は低下するだろう。さらに高精細の映像技術が普及すれば、8Kテレビの優位性も低下する可能性がある。

また、テレビで映像を見るという行動様式は、当たり前ではなくなりつつある。スマホなどでネットフリックスやユーチューブの動画を楽しむ人は多い。国内でも、NTTドコモが次世代の通信規格である“5G”を用いたテレビ放送の実証実験に成功した。ICT(情報・コミュニケーション・テクノロジー)の高度化と実用化とともに、映像配信の可能性は広がるだろう。

アイリスオーヤマは4K対応テレビを低価格で販売

当面の展開を考えると4K放送の開始を受けてテレビ販売への新規参入が増えることが興味深い。生活用品大手のアイリスオーヤマは4K対応テレビを低価格で販売する。同社は2020年東京オリンピックを控えたテレビ買い替え需要の高まりの取り込みを狙っている。

新規参入者の増加によって、既存のテレビメーカーが競争力を高めるために新商品を生み出すことができれば、それはわが国の経済にもプラスの影響を与える可能性がある。その意味で、4Kテレビ放送の開始が変化の呼び水になればよい。

いずれにせよ、現時点では4Kテレビ放送を視聴したいと思う人は、あまり多くない。買い替えを促すような政策も見当たらない。最終的に4Kテレビを買うかどうかは、家計・個人の考え方に影響される部分が大きいだろう。

(写真=時事通信フォト)
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