2018年9月の最新調査を見ると、「知っている」と答えた割合は60%に低下している。また、同じ時点での4K放送を視聴するか否かに関する調査を見ると、「ぜひ視聴したい」と答えた人は全体の11.6%、「まあ視聴したい」と答えた人は28.3%だった。合計すると視聴の意向を持っている人の割合は全体の39.9%である。

一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A‐PAB)「4K・8K市場調査結果まとめ」より

この結果を見る限り、現時点でどうしても4K放送を見たいと思う人が多いとは言えないようだ。

見たいと思う人の割合は限定的

高度化推進協会による市場調査のインプリケーションをまとめると、多くの人が4K放送の良さ(映像の美しさ、迫力)を認識してはいる。しかし、映像の美しさなどを理由に4Kテレビ放送を見たいと思う人の割合は限定的だ。見方を変えれば、新しいテレビと受信機を購入しようとするほど、4Kへの人気、消費者のほしい気持ち=需要は高まっていないということだろう。

その背景にある要因を考えると、まず、消費者の心理が大きく影響しているだろう。4Kテレビの映像は確かにきれいだ。もし、今使っているテレビを買い替えなければならなくなった際には、4K放送に対応したテレビと受信機を購入してもよいと思う人は少なくはないだろう。ただ、テレビはそう簡単に壊れるものではない。手間を考えれば、今のままで問題ないという人が多いのだろう。

「地デジ特需」のような要因は見当たらない

また、経済政策と通信規格変更の影響も大きい。リーマンショック後の2009年、当時の麻生政権は“家電エコポイント制度”を実施した。具体的には、地上デジタル放送に対応したテレビなどを買うことによってポイントが付与され、消費者は指定された家電製品を安く買うことができた。それは、テレビの買い替え需要を喚起した。

加えて、2011年7月、東北3県を除く44都道府県でテレビ放送は地上デジタル放送(地デジ)へ完全移行した。地デジに移行すると、従来のアナログ放送に対応してきたテレビは使えなくなる。エコポイント制度と地デジ放送の開始を受けて、2009年から2010年にかけて、国内のテレビ需要は急増したのである。まさに、“地デジ特需”と言ってよい。

現状、4Kテレビ買い替え需要を高める要因は見当たらないといえる。わが国の政府がテレビ放送の規格を切り替え、いま使っているテレビでニュースなどを視聴できなくなるという不都合が生じるわけではない。また、わが国全体で家電販売奨励策が実施され、より高機能のテレビが買いやすくなるわけでもない。