このように聞くと、これまで東京の一流企業と呼ばれる会社で働いていた人は、「冗談じゃない」と思うかもしれない。自分にだってプライドはある、「都落ち」なんて絶対したくない。気持ちはわかる。しかし、こうした地方の中小企業への転職が、本当に「ダウングレード」だろうか。
私はそうとは限らないと思う。それどころか、「アップグレード」になることも少なくないのだ。後継者もミドルエイジもいないような会社は、赤字続きで、明日にも倒産するイメージがあるかもしれないが、現実はまったく違う。廃業する中小企業の5割は黒字経営で、後継者がいないために、やむなくつぶれているのである。じつに残念でもったいない会社なのだ。
もともと黒字だったということは、消費者ニーズをしっかり掴んでいて、かつ経営も上手くいっていた可能性が高い。このようなダイヤモンドの原石ともいえる会社に転職し、残された経営資源やブランドをフル活用すれば、地方の超優良企業に復活させることができるかもしれない。まさにシンデレラストーリーではないか。
経営者に出世する道が開けるかも
地方には従業員が10名、20名の優良企業も多く、大企業に勤めていた人からすれば、経営への距離がぐっと近くなる。そこで出世して、経営陣に加われば、50代になっても60代になっても働く場を確保できるのだ。
大企業にいたままでは、50歳を過ぎても大した役職がもらえず、50歳半ばで役職定年を迎え、閑職に追いやられるかもしれない。定年まで居続けたとしても、その先は保証されない。それと比べたら、地方の中小企業で勝負をしたほうが、未来に希望を抱ける。
企業経営なんて自分にはできないと思うかもしれないが、最近は無料で経営指導してくれる自治体も増えている。とくに地方自治体は税収を確保するために必死だから、地元企業に入り、立て直しを図ろうとする意識の高いビジネスパーソンがいたら、喜んで全面サポートするだろう。そうした支援を上手に活用すれば、「素人経営者」でも十分やっていけるはずだ。