特養入所希望なら、親との同居は慎重に

ただし特養で利用者負担が軽減されるのは、本人と同じ世帯に住む人全員の所得が低く住民税が非課税などといった条件がある。親が2人暮らしの場合、母親が非課税でも父親が課税対象だと補助を利用できない。が、国民年金だけであれば満額支給で約78万円なので非課税の条件を満たす。預貯金は、単身は1000万円以下、夫婦なら2000万円以下でないと補助を受けられない。軽減措置を受けると施設サービス負担額の目安は国民年金受給者で5万円程度になるケースもある。特養への入所対象は原則として要介護3以上だが、申し込みをしても待機者が多く、入居まで3~4年以上かかる場合もある。

「全国の特養が混んでいるわけではなく、空きがあるところもあります。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談して、多少遠方でも選択肢となるところがないか調べてもらうといいでしょう」(太田氏)

特養でのサービスを受ける必要性が高いと認められると優先的に入所できるよう自治体ではポイント制の判断基準を策定している。太田氏が話を続ける。

「通常、要介護度は軽度より重度を優先します。身近な介護者の有無も大きな要素になります。同居の介護者が要介護3以上の場合、さらに県外に暮らしている場合のポイントが高くなる自治体が多い。将来的に親の特養入所が選択肢となるのであれば、同居は慎重に考えたほうがいいでしょう」

長崎氏も特養に入るコツをこうアドバイスする。

「入居申請書の特記事項に緊急性など、入所しなければならない切実な事情をきっちり書いてアピールする。特養の新設情報収集も大切です。募集枠が広いので入所しやすくなります」

ところで特養入所までの待機期間中はどうしたらいいのか。基本は在宅待機。経済的余裕があれば有料老人ホームなどに入居することになるが、ほかの選択肢もあると太田氏は話す。

「老健を特養の待機に利用するケースが多いのも実情です。自宅復帰を目指す人がリハビリを受ける施設ですが、原則3カ月の限られた期間だけ利用できることが多く、空きが出やすい。推奨されるものではないが、老健を転々として空きを待つという手もあります」

長崎寛人(ながさき・ひろと)
金融機関、介護施設勤務から介護に特化したFPに。
 

太田差惠子(おおた・さえこ)
FPで遠距離介護を支援するNPO法人パオッコ理事長。
 
(撮影=永井 浩)
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