早めに動けばそれだけメリットがあり、皆がトクをする

親が遺言書を作り、その内容を皆で共有するのもいいでしょう。遺言書は決してこっそり作るものではありません。公正証書にしておけば偽造の心配もなく安心です。法定割合に近い配分がベターですが、なかなかぴったりとはいきません。そこで「付言事項」になぜこの配分かの理由を書いておくと、モメる要素がさらに1つ減らせます。

生前なら節税対策もできます。自宅を早めに売却すれば、その資金を以て余生を謳歌でき、有料老人ホームに入ったり、生前贈与をすることも可能です。不動産は自宅として住む人が売却するのが、最も節税になるポイントです(居住用財産を譲渡した場合3000万円までの特別控除)。

今後、預貯金や証券等の動きは、マイナンバーで正確に把握されますから、財産評価を下げて税を軽減するなどの対策は一切できなくなります。金融資産がある人は投資用マンションを購入し賃貸にしておけば分けやすくなり、時価の30%程度の評価額になるので相当な節税効果が見込めます。

いずれにせよ早めに動けばそれだけメリットがあり、皆がトクをします。夏休みに帰省していきなり相続の話を持ち出すのはためらわれるでしょうが、親の老後をサポートする気持ちで切り出してみましょう。

「母さん、老後をどうするか考えてる!? 足腰が弱ってきたらどうしよう。ケア付きの住宅に移るなら、この家は空き家になっちゃうのかな」

という具合に、親の老後を子どもとして助けたいことを言って話し合ってみてはどうでしょう? 親を主役としてそれぞれの考えを出し合っておけば、いざ相続となっても悲惨な結末にはならないはずです。

曽根恵子(そね・けいこ)
1956年、京都府生まれ。京都府立大学女子短期大学部卒業。PHP研究所に勤務ののち87年独立。現在「夢相続」代表取締役。東京・八重洲で相談業務を行っている。