積年の恨みつらみが爆発してしまう

そもそも家を継ぐのは、家業や親戚づきあいやお墓の管理など、あれやこれやの面倒も引き受けることとセットでもあったので、他の相続人もある程度は譲歩したほうが得策だという判断もあったでしょう。

写真=iStock.com/bee32

ところが最近は、誰も家業を継がなかったり、親が子の負担になるのを嫌って一人暮らしをしているケースが増えています。同居している子がいてもさして預貯金があるわけでもなく、兄弟姉妹が納得できるだけのお金が払えない。そうなると、

「資産を独り占めにするのか!?」
「私が親の面倒を見てきたんだ」
「相続の権利は全員にあるぞ!」
「自分は高卒で諦めたが皆は大学まで行かせてもらったじゃないか」

……等々、積年の恨みつらみが爆発してしまうのです。

考えてみれば兄弟姉妹が仲良く過ごしたのは、幼少の頃からせいぜい学生時代まで。それぞれ家を出て、盆暮れ正月と冠婚葬祭のときくらいしか顔を合わせない兄弟姉妹など、他人も同然なのです。しかも、赤の他人ではないだけに遠慮がなく、とことんまで傷つけ合ってしまうのです。

裁判に持ち込めば「絶縁」は必至

話し合いで解決しなければ家庭裁判所に調停を申し立てることになりますが、家裁は配分の「結論」だけを決めるところで、争いの原因であるそれぞれの思いは聞いてくれません。どんな決定が下っても心情的には受け入れられず、兄弟姉妹は絶縁状態になってしまいます。

モメるのは嫌だからと弁護士に依頼する人もいますが、彼らは依頼した人の味方をするだけ。丸く収めてくれるわけではありません。誰かが弁護士をつけたら、皆が弁護士をつけざるをえなくなり、結局は絶縁です。

相続を皆が納得する形で収めるには、一にも二にも事前準備が大切です。理想は、生前に家族で財産がどれだけあるかをオープンにして、相続について話し合っておくことです。