「週に1度は午後4時に帰り、その時間を食に関することに使ってあとで共有しようという『インスタントワーキングデー』を彼女たちが提案しました。4部署で実験的に行い、今では全社で取り入れています」

(左)日清食品 営業本部 営業戦略部次長 渡辺英樹さん(右)日清食品冷凍 東京営業課 西川大地さん

「アメフトで日本一になることと、東日本大震災の被災地に食で何か貢献したい。その2つの夢をこの会社ならかなえられると思ったんです」と屈託のない笑顔で語る西川大地さんは、入社2年目を迎えたばかり。日清食品冷凍で営業を担当している。高校から続けているアメフトは、現在も社会人チームに所属し、週に4日練習に参加している。

「スーパーフレックスのおかげで、定時より朝1時間早く出社して仕事をし、その分早く帰って練習に出る調整が自分でできるのはとてもうれしいです。男性も女性も、仕事を一生懸命やりながら家庭のケアもしているという先輩方を見ていると、僕もいつかまねしたいと思えますね」

周囲のアメフト仲間たちが就職すると練習が続けられずやめていくのを見る中で、続けていけることへの喜びと会社に貢献したいという気持ちはさらに強くなったそうだ。

冒頭に登場した佐藤さんは、マーケ・ECグループのブランドマネジャー。娘を持つワーキングマザーで女性管理職という、まだ社内には少ないロールモデル的存在になったことで、自分が悩み苦しんできたことを次の世代の女性たちが少しでも楽に乗り越えられるように手助けしたいと話す。数カ月に及ぶ管理職研修はきつかったが、会社の期待を強く感じ、新卒時は「スーパー秘書になって、結婚退職しようと思っていた」という彼女を大きく変えた。

「これだけ自分に投資してもらえるのなら、上を目指すのは自分の責任だと思いました。自分のスキルを極めたいというだけでなく、これからはちゃんと上を目指して、強い組織をつくっていけるような働き方をしたいと思います」

たった数年前に動きだし、猛スピードで進められる日清食品ホールディングスの働き方改革。トップダウンとボトムアップの両方がバランス良く、そして本気で全力で取り組み、部署を横断して各人のスキルを活かしているからこそ実現へとスピーディーに動いてきた。そして、それが西川さんや佐藤さんのような、日清に加わって数年の社員にも浸透し、「会社に貢献したい」という気持ちへと還元される良い循環ができ始めている。

次のステップは、「経営効果などお金を生むダイバーシティ」への転換。そして、いつか「ダイバーシティ委員会解散」となっていいレベルのダイバーシティや働き方改革の浸透だ。

撮影=市来朋久、工藤朋子