ずっと日清の人事を支えてきたが、ここ数年の急速な変化には驚きを隠せない。
自身もダイバーシティ委員会に携わり、副委員長を務めている。委員会のメンバーは、全員本所属の部署を持った“兼業”メンバーばかり約20人。性別も年代も国籍も多様だったが、「会社を働きやすくしたい」という強い思いと行動力を持っていた。
三浦さんと一緒に長年、人事に携わってきた2児の母、段村典子さんも最初から中心メンバーに加わった。
「自分からやりたいという人が集まったからこそ、『私たちが変えよう』という強い思いがあったんです」
有志の委員会が、自作動画で社長を動かす
集まったメンバーは、「こうしたい」「こんなサポートが欲しい」というアイデアを次々とプロジェクト化し、担当分けをし、実行に移していった。
その中で、多様な人材がいることは大きな利点となった。例えば、アイデアの制度化、仕組み化をしていくのは人事が担当。社内にメッセージや方向性を浸透させるためのポスターやPOPはデザインルームやマーケティングのメンバーが、全国の支店や管理職への理解を求める活動には営業部門の管理職や執行役員がそれぞれ動いたのだ。こうした現場で、すでにネットワークと信頼、そして経験やスキルのある人たちが、組織を横断して注力できたことが、日清が猛スピードで改革を推進できた大きな原動力となった。
16年の年頭挨拶で安藤宏基社長は「変わりゆく環境変化に対応するためにダイバーシティ、徹底してやりましょう! 今年はダイバーシティ元年!」と全社に向けて発信した。
実は、社長のこの年頭挨拶に至った背景には、立ち上がったばかりのダイバーシティ委員会が作った、社長を突き動かす動画があった。
有志が集まった委員会は、まずは社長を説得しようと、工場から本社まで社内のさまざまな人の声を集め、会社への愛とともにもっと働きやすい環境になることを伝える動画を作って、社長はじめ役員たちに見せたのだ。その完成度の高い動画は、社長の心を大きく動かし、熱いメッセージとなって社内全体に波及していった。