17年11月、通信キャリアのKDDIが英会話教室大手・イーオンの買収を発表したが、これに限らず、2000年代後半以降、語学教室業界ではM&Aが繰り返されている。そうした案件を数多く手がける中小企業M&Aサポート・奥寺北斗社長が、その事情を語る。

若い白人男性講師に、人気が集中する

英会話大手では、これまで同業者どうしの事業再編が進んできました。チケットを買っても授業が受けられず、かつ解約金返還のトラブルなどが社会問題化し、07年に経営破綻したNOVAは、数度の買収・売却を経て、現在は同業のジオスとグループ企業となっています。シェーン英会話は10年に学習塾大手・栄光の傘下に入りました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/andriano_cz)

これに対し、中小の場合は英会話ビジネスに魅力を感じ、業界に参入しようとする異業種の企業が買い手となるケースがほとんどで、一般に売り手、買い手とも国内事業者です。

なぜM&Aが盛んなのかを探る前に、英会話教室の市場を見てみましょう。当社の調べでは、直近17年の語学教室の市場は年間870億円弱。過去数年間、年率1%前後で持続的に成長しています。受講者数も年々増加しており、17年には500万人に迫る勢い。一方で事業所数、従業員数も増加傾向にあって、事業者間の競争は激化しています。

加えて、レアジョブなどインターネットを利用した低価格のオンライン英会話サービスの急成長があり、語学学習を目的とする英語圏への短期留学ビジネスも市場が拡大しています。このため大手は英語以外の言語を手がけたり、留学を支援したり、大学の語学の授業を受託したり、国際会議をアレンジしたりと、語学を軸に事業を幅広く横展開しています。

市場に活気がある理由の1つは、英語教育の低学年化です。08年度から小学5、6年生の英語教育が開始され、20年度には3年生から英語が必修化される予定。これを受けた教育産業界は、子供向け英語教室を拡大中で、子供向けコースを持つ英会話教室を買収することで、受講者を自社に囲い込もうとしているのです。

▼英会話学校業界大手のM&A
2018.01 ベネッセHD、オンライン英会話サービス「ぐんぐん」株式追加取得
2017.11 イーオンHD、KDDIに株式譲渡
2016.12 オンライン大手レアジョブ、子ども専門オンライン英会話「リップル・キッズパーク」運営会社を買収