――エアコン導入経費の一部として、町長の給料と期末手当一年分、合わせて1200万円を返上するという公約も掲げていました。必要な総額から見ればわずかで、スタンドプレーだとの批判もありましたが。

そこは「親心」のつもりでした。私と妻には子供はいないのですが、宇多津町の子供たちはみんな自分の子供だと思っていましたから。妻も働いていて、1年ぐらいはそれでなんとかなるだろうと。この提案は議会で否決されましたが、2年間給料と期末手当を半額にするという修正案で議会の承認を得ましたので、実質的にはほぼ同じことになりました。

当初試算の総額2億2300万と比べれば確かに小さな額かもしれませんが、町の実質負担がその3分の1だとすると、少しは助けになるだろうと思いました。

――とはいえ、エアコン整備事業費を盛り込んだ補正予算案が町議会で可決されたのは、町長就任から8カ月以上が過ぎた2011年6月でした。どのようなことが障害となったのでしょうか。

はじめにエアコン設置の事業費を補正予算で計上したのは、2011年3月の議会でした。その時の一般会計の補正予算案は、エアコン事業費を除いた形で修正可決されました。実質的に、エアコン事業については否決された格好です。

町長就任後の初の議会となった2010年11月臨時会の所信表明で、私は改めて町内の小中学校にエアコンを設置する方針を打ち出しました。それ以降、「エアコンのために他の諸事業にしわ寄せが及ぶのではないか」、「財政全体の議論をすべきできでないか」、「エアコンでなく耐震や増築など他の環境整備が必要」「思いつきでは困る」「多額の借金を抱えることになる」といった反対意見が議会では出されました。

宇多津町の中学校ではベトナムの子供たちとの交流事業を行っているのですが、「ベトナムの子どもたちは暑い中エアコンなしで頑張っている。われわれも体力が必要」という反対意見もありました。教室は学力をつける場であって、体力をつける場ではないと考えていますが……。

もちろん、「校舎の耐震化も進めている。子どもたちのためエアコン設置の実現を強く望む」という強い賛成意見もありましたが、残念ながら結果として反対が多かったという結果です。否決されたのはあの東日本大震災発生の10分ほど前で、なんでわかってくれないのかと、悔しくて涙を流したことを今も鮮明に覚えています。