選手が望めば「真夏の甲子園」でやらせていいか?

そしてスポーツ界全体が大きく動くほどの意識改革を湧き起こそうと思えば、国民に非常に影響の大きい、甲子園改革から始めるべきだと前号(Vol.113【緊急提言! 夏の甲子園】猛暑・連戦・丸刈り強制……朝日新聞は高校球児を“甲子園洗脳”から解放せよ)で述べた。

巷では夏の甲子園についての問題点が議論され始め、メディアも関係者に取材をし始めた。特にスポーツ紙の記事が面白い。

僕も京セラドーム開催を前号で提案したけど、実現するには様々な問題点があることは承知している。ただ僕がその提案をしたのは、灼熱の太陽の下での甲子園ということにどこまでこだわらなければならないのか、科学的・合理的に考えて行きましょうよ、という問題提起だった。

東京スポーツのアンケートによれば、選手も監督も保護者も、圧倒的多数が真夏の甲子園派。もちろん真夏の甲子園は高校野球の伝統そのものであり、それを目指して球児は野球をやってきたわけだから、甲子園でやりたいのは分かる。でも中には、「最近の子供はクーラーが効いたところで生活していて、ヤワになっている」との相変わらずの精神論もあった。まあ僕もかつては同じようなことを言っていたので偉そうには批判できないけど。

真夏の甲子園でやれるならやったらいい。その代わり、真夏の甲子園大会で選手が被るデメリットを科学的にしっかりと明らかにしてから判断すべきだ。

同じく東京スポーツが、日本高野連の竹中雅彦事務局長に取材をしている。竹中事務局長は、熱中症対策はしっかりやらなければならないし、今後もあらゆる可能性を考えて対応していかなければならない、と問題意識は持っている。ただ大問題は、プレーヤーズ・ファーストについて全く理解していないこと。

竹中事務局長は、プレーヤーズ・ファーストの観点から、選手が真夏の甲子園を望むなら真夏の甲子園でやるべきだという考えを示した。

しかし、これはプレーヤーズ・ファーストでも何でもない。主催者や後援者の朝日新聞や毎日新聞が嫌う、悪しきポピュリズムそのものだ。

選手はまだ高校生。その判断能力が不十分なことから選挙権も与えらず、守られる存在として犯罪を犯しても少年法の適用となる。いくら高校生の選手が真夏の甲子園を望んでも、真夏の甲子園が選手にとって悪いものなら、選手の望みに反して真夏の甲子園を止めることこそがプレーヤーズ・ファーストというものだ。

今、真夏の甲子園を望んでいる選手や監督、保護者であっても、真夏の甲子園の選手への悪影響をしっかりと認識すれば、考えが変わるかもしれない。